金総書記「予想外に活発で驚いた」、訪朝のクリントン氏

米国人女性記者2人の解放と引き換えに、クリントン元米大統領の訪朝を実現させた〔AFPBB News〕

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 ところが調子が良かったのはその時期までだ。

 北朝鮮の情報などを分析する韓国の情報機関・国家情報院によると、総書記はこのところ少し弱気になっているらしい。国情院の議会報告では、総書記は家族や古い友人を頼るような態度を見せることが多くなっているという。金日成主席の遺訓を「貫徹できない」と嘆き、懸案を解決できないことに焦燥感もあるとしている。

 確かに昨年来、実妹である金敬姫(キム・ギョンヒ)党中央委部長が総書記に同行したと北朝鮮メディアで報じられることが増えた。

金総書記親子とプロパガンダ、社会主義国特有の町並み 平壌

父の遺訓を実現できず、息子は苦悩?〔AFPBB News

 敬姫氏はアルコール依存症による合併症とされ、長らく表舞台から姿を消していた。それが2009年6月、実に14年ぶりに公式報道に登場し、復活を果たした。最近も夫で実力者の張成沢(チャン・ソンテク)国防委員とともに、たびたび動静が伝えられている。消息筋は「金総書記は結局のところ家族しか信用できないのだろう。敬姫氏夫婦には息子がおらず、後継者の後見人としての役割が期待されている」と推測する。

 2010年2月1日付の労働党機関紙・労働新聞は総書記の「人民がトウモロコシをまだ主食にしていることに胸が痛む」という言葉を掲載した。住民がコメさえ食べられないという苦境を総書記が認めるのは極めて異例だ。

 かつて父・金日成主席が「人民が白米ご飯に肉のスープを食べ、絹の服を着て瓦屋根に住むようにしなければならない」と話したことを踏まえたもので、この「遺訓」を達成できないまま晩年を迎えようとしていることを嘆いている様子だ。

打つ手なし

金総書記専用の駅は19か所

AFPBB News

 経済政策でも打つ手なしの状況が続く。国連による制裁や日米の独自制裁などで経済難が続いている上に、2009年11月に断行したデノミがさらに混乱を招いた。

 市場経済の拡大への危機感から、物価高騰を抑制し、社会主義経済に回帰することがデノミの目的だった。しかし物資が不足し、逆に物価は高騰。食糧難が発生、餓死者が出たとも伝えられるほど国内は混乱している。国情院も「(デノミの)後遺症に直面している」「住民と当局の間で対立が起きている」と指摘しており、体制不安の要因になる可能性もある。