民主党政権が誕生して5カ月になり、農業政策も徐々に姿を現してきた。減反をめぐる方針転換や農協との確執など、様々な点で自民党時代とは様相が異なる。本稿では、民主党の農業政策が食料自給率の向上に結びつくかどうかに絞って検証し、食糧安全保障には何が必要なのかを考えてみたい。

 話を進める前に、自給率の概念について整理しておきたい。日本の食料自給率(2008年度)は41%。農林水産省によると、「先進国中最低で、食料危機の際に安全保障上、問題」なレベルだ。農水省の懸命な広報活動が実り、自給率問題は広く認知されるようになった。

生活実感と合わない自給率、金額ベースなら・・・

 だが、「41%」が生活実感と合わないという人が多いのではないだろうか。

 主食のコメは100%国産だし、スーパーの野菜コーナーでも外国産は少数。牛肉や豚肉も輸入物ばかり食べているわけではないし、ほかの人はともかく、自分はもうちょっと国産品を食べている気がする――。そう思う読者は少ないはずだが、その実感は恐らく正しい。

 農水省が盛んに喧伝しているのは、カロリーベースの食料自給率。つまり、国内で供給される総カロリー(食べ残して捨てられるものも含む)のうち、どれだけを国産で賄えているかという割合なのだ。ここには、目に見えない様々な自給率「引き下げ」要因が働いている。

 その最たるものが、家畜の飼料である。例えば、日本で生まれ育って処理された豚でも、トウモロコシなどの餌を全て輸入に頼る場合、その豚肉は自給率「0%」と見なされる。

 また、ほとんどを自給可能なダイコンやキャベツ、トマト、キュウリなどの野菜はカロリーがほとんどないため、いくら国内で生産しても自給率には反映されない。

 事実、カロリーベースでは40%程度の自給率も、金額ベースで計算し直すと大きく跳ね上がる。国際比較可能な2003年度の数値では、日本は70%と英国の40%を大きく上回り、ドイツの75%に迫っている。

金額ベース食料自給率の国際比較(2003年度)
  オーストラリア アメリカ フランス オランダ ドイツ 日本 イギリス
生産額
ベース
155 102 101 96 75 70 40
カロリー
ベース
237 128 122 58 84 40 70
穀物
自給率
333 132 173 24 101 27 99

出所:農水省 単位:%