来年の米国大統領選挙で再選を目指すバラク・オバマ大統領、米国の3大ネットワークの1つ、ABCなどのインタビューに答えて「劣勢」を率直に認めるコメントを発表していました。
ABCが10月3日に発表した世論調査によると、米国民から無作為抽出した母集団で55%が次期大統領選挙でのオバマ氏の敗北を予測、勝ち目が薄いようだが、と問われたのに対して「その通り」と劣勢を認めたものです。
ティーパーティー運動などの痛烈な批判、歴史的と言われる中間選挙の敗北、いずれもオバマ氏が目指した「チェンジ」に米国の「保守」が待ったをかけた格好のなかで、率直な現状認識を語るのもまた大切なことか、とも思ったわけですが、ここで1つ気になったことがありました。
内政外交を貫く最大課題の1つとして「テロ対策」を挙げるオバマ氏は、国際テロ組織アルカイダが今も「最上の敵」としたうえで「あと2年程度」現在のテロ対策政策を維持できれば、アルカイダが米国の中枢部に二度と、9.11級の大規模な攻撃を仕かけることが「非常に困難」になる、として、自信のほどを見せたのですが・・・。
無理が垣間見えたビンラディン『暗殺』
ここでどうしても思い出さねばならないのは、日本で言うと今年の連休前、震災・福島第一原子力発電所事故の混乱が続く5月2日に飛び込んできた「オサマ・ビン・ラディン掃討作戦」の報です。
ビン・ラディン「容疑者」は2001年9月11日に引き起こされた同時多発テロの首謀者と断定されていたわけですが、パキスタンの首都イスラマバードから北東約60キロのアボッターバードに潜伏していたことが判明、5月2日(米国では5月1日)同容疑者の殺害に成功した、と大々的に報道されたものです。
一部報道によるとこの掃討作戦は「ジェロニモ E KIA」と名づけられ、米国海軍特殊部隊SARLsから派生したDEVGRUメンバー15人ないし25人ほどが参加、CIA要員が同乗したステルス型ブラックホークヘリコプターなどでビン・ラディンとその家族が潜伏しているとされる豪邸に接近、ロープを使って降下し、現地時間の午前1時ごろ急襲、約40分の銃撃戦によって邸宅を制圧したとされます。
ビン・ラディン容疑者は武器を持っておらず、一切抵抗しなかったと言われますが、頭部と胸部を打ち抜かれて即死、ほかにビン・ラディンの息子と思われる若い男性、兄弟2人の男性と1人の女性も死亡したとされます。
深夜にもかかわらず米国内に報じられた「ビン・ラディン退治」のニュースは熱狂的に歓迎されますが、邸宅内の写真には子供の遊具なども映っており、米国側に人的被害ゼロという「鮮やかな作戦行動」に、諸外国から冷ややかな反応があったのも事実です。
そもそも米国はこの作戦をパキスタン政府に事前に通告していませんでした。終了後に報告を受けたパキスタン側は不快感を明らかにし、ムシャラフ前大統領は「明確な主権侵害」とまで米国の行動を非難しました。