今年は寅年。株式市場では「虎は千里を走る」の故事成語に因み、相場が大きく躍動する年と言い伝えられている。しかし、現実は、経済の前途は多難で、むしろ逆になりそうな雲行きだ。金融政策に当てはめると、日銀は「千里の迷走」を余儀なくされる可能性が高い。
2010年最初の当コラム。できることなら「日銀、出口政策に意欲」という威勢の良い記事を書きたいところ。残念ながら、そうは問屋が卸さない。景気下振れ、円高・株安の再燃などが懸念されるのは当然として、最大のネックは民主党政権の舵取りが覚束ないことだ。そのせいで金融政策は迷走状態に陥りつつある。
政府の迷走が日銀に伝染
これまでの政策運営を簡単に振り返ってみたい。「白川日銀」は多少の紆余曲折はあったが、2009年秋までは無難な舵取りを行っていた。リーマン・ショック後に導入したCP・社債の買い入れや企業金融支援特別オペなどの異例措置の廃止を10月30日に決め、出口政策の一歩を踏み出すところまでこぎ着けた。
その直後、事態は暗転した。日銀は12月1日、臨時金融政策決定会合を開き、「新型オペで10兆円を資金供給する」という緩和強化を決定し、再び、出口から遠ざかった。続いて同月18日の定例会合では、日銀が望ましいと考える中長期的な「物価安定の理解」を明確化し、「マイナスの物価は容認していない」と表明。具体的な目安として「1%程度」との数値を打ち出すに至った。
緩和策の中味は2009年12月3日「日銀追加緩和のお寒い実態」で解説した通りだが、民主党政権の迷走が日銀に伝染した経緯を多少補足したい。
本来であれば、政府がデフレを宣言、中央銀行が呼応して金融緩和を実施する場合、危機意識を共有した上での協調行動となるはず。ところが、今回は、事前の調整の形跡は見られなかった。