日銀が1日、臨時金融政策決定会合を開き、「新型オペで10兆円を資金供給する」という追加緩和策を決めた。
新聞紙面では「量的緩和」などの言葉が踊り、あたかも強力な緩和策に踏み切った印象があるが、実態は既存オペを小細工しただけのお寒い内容。
ワイドショーのテレビカメラの前で「必殺仕分け人」が官僚を罵倒する事業仕分けは、本質的な財政削減効果の無さとは裏腹に、国民の支持を得た。気を良くした民主党が大衆迎合路線を突き進むことは間違いないが、本来は、技術的な金融政策を担う日銀までもが、政治の圧力に負けて、大衆迎合に傾きつつある。
大言壮語の解説で政策努力をアピール?
金融緩和とは、本来、政策金利の誘導目標を引き下げる「利下げ」か、当座預金残高など量的指標の引き上げによる「量的緩和」か、いずれかの手段によって行われる。
現状において、日銀は金利を操作対象としており、誘導目標である無担保コール翌日物は0.10%のまま変更されなかった。では、一体何が変更されたのか。「共通担保資金供給オペ基本要領」の一部が改正されたのだ。
通常、この手の変更は金融市場の専門家だけが注目する極めて実務的なものだ。多少説明すると、従来から行われている「共通担保資金供給オペ」の手法として、金利固定方式も加えたというだけのこと。期間3カ月の資金供給が0.10%の固定金利で実施されることになる。
金融市場での効果としては、「2年物までの国債利回りが低位で安定しやすい」(都銀)とみられている。ただ、そもそも、2年物の市場金利はかなり下がった状態にあり、今回の日銀の措置による効果は「極めて限定的」(外資系証券エコノミスト)だ。
所詮、その程度のことが、2日の朝刊各紙では「追加緩和」「量的緩和」と大々的に報じられた。
それは、日銀が大言壮語の解説を行ったからに他ならない。日銀は1日の決定会合後に参考用に1枚の資料を配布した。その中で、共通担保オペの改正を「新しい資金供給手段」と仰々しく位置付け、これによって「金融緩和の一段の強化を図る」と喧伝したのだ。