政権は何の準備もないままに、11月の月例経済報告で、唐突に「デフレが大変だ」と宣言してしまった。日銀にしてみれば、間の抜けた行動は無視したいところだが、相手は政府だ。宣言によってデフレ期待を強めた金融市場では円高・株安が進行。日銀の一手に注目が集まった。無策を決め込むと政府・日銀の不一致がさらに金融市場を動揺させるため、日銀は緩和強化せざるを得なくなった。物価安定の明確化は、「オマケ」のお付き合いだ。
民主党政権は長期金利の上昇に耐えられるか
その後、株価は反発に転じ、為替は円安に振れた。表面上、政府・日銀の対応が奏功したように見えるが、実際は、「年末を控えたポジション調整で主要国の株価が反発し、同時にドルが買い戻されたことになびいた」(生保運用担当者)に過ぎない。結局のところ、政府の気まぐれ宣言の尻拭いのために日銀が振り回されただけだ。
普天間基地問題の右往左往ぶりは目を覆うばかり〔AFPBB News〕
2010年の金融政策を占ううえで、引き続きカギを握るのが政権の舵取りであるのは言うまでもない。景気は二番底の恐れが指摘されるが、「再びリーマン・ショックのような事態が起きなければ軽い調整にとどまる」(外資系証券エコノミスト)とみられる。株安・円高が再燃するリスクはあるが、日銀が超低金利を維持する中、欧米中銀が出口政策を模索する限り、円高圧力は緩和される公算が大きい。
とすれば、政府が「デフレ宣言」級の失態を繰り返さなければ、金融政策が一段と迷走するのは回避されるハズだ。しかし、残念ながら、そうなる可能性は小さいだろう。ご案内のように普天間基地の移転問題を始めとして各分野における民主党政権の右往左往は目を覆うばかりだからだ。アマチュア政権だけにある程度の不手際は予想されたが、「これほどひどいとは思わなかった」(都銀)と市場関係者は口を揃える。

