「まるで太平洋戦争みたいなもんですよ」。米国企業に戦いを挑む自分たちの様子をこう例えるのは、三宅(広島市)の三宅正光社長である。
冗談混じりとはいえ、かなりどきりとする言葉だ。現実の太平洋戦争通りにことが進むと、最後は米国企業に敗れてしまうことになる。
もちろん、三宅社長にそんなつもりはない。広島の小さな中小企業が、いかに大きな企業を相手に戦おうとしているのか、そして、それがいかに厳しい戦いであるかを、例えているのだ。
成長著しいセキュリティー事業、ターゲットは米国市場
〒731-5107
広島市佐伯区石内上1丁目16番1号
三宅には事業の柱が2つある。1つが値札ラベルや商品ラベル、バーコードシールなどを製造する印刷事業。そしてもう1つがセキュリティーシステム事業。こちらがまさに今米国企業と一戦を交えている事業である。
同社がセキュリティーシステム事業に本格参入したのは、十数年前のこと。ここ数年、目覚ましい勢いで成長している。同事業の売上高は、現在、全売り上げの約4割である。まだ印刷事業の売り上げの方が大きいが、「来年は印刷事業を上回るだろう」と見ている。
セキュリティーシステム事業の中核となっているのが、万引き防止システムだ。家電量販店やCDレンタルショップなどの出入口に、よく万引き防止用のゲートが設置してあるのを目にする。客が、防犯ラベルの貼られた商品を持って、レジを通さずにゲートを通ると、ブザーが鳴り響く。防犯ラベルに組み込まれた回路が電波に反応してブザーが鳴るという仕組みだ。万引き犯人を捕まえられるのはもちろんだが、設置するだけでも大きな抑止効果がある。
万引き防止システムに用いる防犯ラベルを作る会社は、国内で2社しかない。三宅は国内で30%のシェアを握る国内最大のメーカーである。
現在、ドイツ、イタリア、フランスなどの欧州各国、加えて中国の計十数カ国でも万引き防止システムを販売している。しかし、どうしても切り込めない国がある。米国だ。
それというのも、米国には、防犯ラベルの世界シェアが90%というガリバー企業が存在する。1969年創業のチェックポイントという会社だ。世界80カ国でセキュリティーシステムを販売するグローバル企業である。チェックポイントの防犯ラベルは、日本でも70%近くの大きなシェアを持っている。
三宅の世界シェアはまだ2%程度に過ぎない。このシェアを押し広げるには、どうしても米国市場を攻略する必要がある。現在、全世界で年に約50億枚の防犯ラベルが製造されているが、その半数は米国市場向けである。それほど米国市場は大きいのだ。米国市場はチェックポイントの独占状態だ。米国市場に入り込むには、チェックポイントに真っ向勝負を挑まなければならない。
三宅独自の「ダイカスト製法」ラベルとは
しかし、チェックポイントはすでに40年の実績があり、米国の代理店を完全に押さえている。そこに日本の新興企業が飛び込んでいき、シェアを奪い取るのは並大抵の難しさではない。おまけに敵はチェックポイントだけではない。中国メーカーも米国市場を虎視眈々と狙っている。