拙著『金色のゆりかご』(光文社)は、「望まない妊娠」と「海外養子斡旋問題」をテーマにした長篇小説である。
「小説宝石」2007年6月号から2008年1月号まで連載し、2008年6月に単行本として上梓された。
JBpressのサイト上で私の著者インタビューが公開されているが、ごく短いものでもあり、今回から数回をかけて、『金色のゆりかご』で扱った「望まない妊娠」と「海外養子斡旋問題」について、あらためて考えてみたいと思う。
小説中には書き切れなかった情報も多くあるので、この機会に多くの皆さんに知っていただきたいと考えている。
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それにしても、男性である私がなぜ「望まない妊娠」にことさら関心を抱いたのか。
そもそものきっかけは、私の不妊症だった。
「男性不妊という苦難」の回で繰り返し述べた通り、私は結婚4年目に精子減少症(乏精子症)であることが分かり、以後数年にわたって人工授精が行われた。
妻の排卵日に合わせて、私から採取した精子を妻の子宮内部に送り込むだけのごく簡単な処置で、人工授精と名乗るのもおこがましいが、不妊治療であることに変わりはない。
成功の確率は3回に1回と言われていたが、丸2年が過ぎても妻は妊娠しなかった。
自分の体に訪れる生理によって、人工授精の失敗を知らされる妻の姿を見るうちに、私はこんな悲しみを繰り返すくらいなら養子をもらえばいいと思いついた。
その後、われわれ夫婦は子供を授かったが、養子をもらおうと考えた時の気持ちは長く私の中に残った。