平均19.2%という高視聴率を出したフジテレビ系ドラマ「救命病棟24時」に続いて、今クール(2009年10~12月)も新しい医療ドラマが始まりました。日本テレビ系の医療ドラマ「ギネ 産婦人科の女たち」(主演は藤原紀香さん)がそれです。初回視聴率が14.8%と、好スタートを切りました。

 「ギネ」とは、産婦人科医のことを指す医療業界の用語です。このドラマ「ギネ」は、これまでの数多くの医療ドラマと決定的に違う点が1つあります。それは、都内の産婦人科救急の最後の砦、昭和大学病院 総合周産期母子医療センター長である、岡井崇(たかし)・産婦人科現役教授の小説『ノーフォールト』が原作となっているということです。

 分刻みのスケジュールをこなす現役の医学部教授が、仕事の合間の時間を注ぎ込んで長編小説を書き上げたなんてことは前代未聞です。岡井教授にとっては、そこまでしてまで、みんなに広く伝えたいことがあったのです。

産婦人科医療崩壊にとどめを刺した医療訴訟の多さ

 今、東京都内において、妊娠3カ月目で分娩施設を探そうとすると、多くの施設で予約を取ることができません。その話を聞くと、愕然とする人が多いのではないでしょうか?

 それでも大都市圏は、妊娠2カ月目で探せば予約を取れる病院があるだけ、まだましです。地方では分娩を取りやめる施設の増加で、出産できる場所がないことも多いのです。

 「少子化なのになぜ?」と思われるかもしれません。しかし、現実問題、出生数がここ10年で10%の減少に対し、分娩施設数は30%以上も減少しています。いくら産婦人科が過酷な仕事とはいえ、この減少は多すぎます。実に、産科病院または診療所の3件に1件がこの10年で消え失せてしまったということなのです。

 なぜ、これほど産婦人科が減っているのでしょうか。

 実は、産婦人科は36時間連続勤務やオンコールなどに代表される過重労働問題(過去のコラム「はっきり言おう、医師の労働環境は劣悪だ」「医師は非番でも飲酒禁止?」を参照)があることに加えて、医師1人当たりの医療訴訟が全科目の中で一番多いのです。

 この、医療訴訟の多さが産婦人科の閉鎖を加速させた原因であることは間違いないでしょう。

裁判は真相究明をする場でも、再発防止策を検討する場でもない

 「医療訴訟が産科医療崩壊にとどめを刺した」というと、「患者に泣き寝入りを強いる趣旨の発言でけしからん」と思われる方がいるかもしれません。