2008年の中国経済は、北京五輪の牽引力によってこれまでの2ケタ成長を持続できると見られていた。だが、第3四半期の経済成長は内需不振と外需低迷により、大きくスローダウンしている(実質GDP伸び率は2007年第3四半期が11.9%だったのに対して、2008年同期は9.0%)。
胡錦濤主席と温家宝首相が最近発表した談話によれば、中国経済はいろいろな問題を抱えているが、そのファンダメンタルズは依然として良好だという。世界経済が深刻な金融危機に見舞われる中で、中国経済が9%前後の高成長を持続できただけでも、十分に評価されるべきであろう。
問題は中国経済が9%程度の成長を持続できるかどうかにある。9%成長は巡航速度ではなく、さらなる減速への通過点かもしれない。だとすれば、今後、雇用の悪化がより進み、中国社会は大きく不安定化する恐れがある。
グローバル金融危機を引き起こした米国の赤字体質
世界経済は米国のサブプライム問題を発端とする金融危機によって大きく減速している。当初、米国のGDP(国内総生産)に占めるサブプライムローンの割合はせいぜい1割程度とみられ、その影響は2008年の半ばに収束すると予想されていた。しかし、8月にサブプライムローン利用者にとっての金利負担が引き上げられ、利払い不能に陥った家計が急増し、金融危機が全世界に広がった。
しかしよく観察すれば分かるように、今回の金融危機の本源的な原因はサブプライム問題ではない。むしろ、サブプライム問題はその結果に過ぎない。金融危機を引き起こした原因は米国の慢性的な赤字体質にある。すなわち、財政赤字、経常収支の赤字と家計収支の赤字である。
普通の国ならば、これだけの赤字体質に陥っていれば、経済はとっくに破綻しているはずだ。まずインフレーションの高騰により実質経済成長はマイナスとなる。そして経常収支の赤字長期化と、財政赤字によって、対外支払い危機に陥るはずだ。さらに家計の収支も赤字とあっては、消費が伸びるはずもない。
でも、米国は普通の国ではなかった。ドルという基軸通貨を保有する米国は、3つの赤字で蓄積された支払い超過分を、ドルの増刷によって消化してきた。その資金循環の中で重要な役割を果たしたのは、3兆ドルもの外貨準備を保有する日本と中国である。
特にここ10年来、世界の工場に変身した中国は際限なく安い製品を米国に輸出してきた。それによって、米国はインフレーションを抑制できた。
そのうえ、中国は国際貿易と為替介入によって蓄積された巨額の外貨準備の大半を、米国債と金融債に投資している。極端な言い方をすれば、米国にとって日中という2大債権国が造反しなければ、安心して3つの赤字を増やし続けられるのである。
とはいえ今回の金融危機をきっかけに、もっぱら米国への輸出という外需に依存する経済成長モデルは、持続不可能であることが明らかとなった。米国の債務超過は一時的な経済バブルによって影を潜めるが、いずれ明らかとなり、世界経済を大不況へと導く。それがまさに今回のグローバル金融危機である。