中国がWTO(世界貿易機関)に米国を提訴した。

中国、一部の米製品にダンピング調査 米国の緊急輸入制限に対抗か

米国が中国製タイヤの緊急輸入制限を決めたことに対し中国がWTOに提訴(写真は浙江省にある杭州中策ゴム工場)〔AFPBB News

 米国が中国製タイヤにセーフガード(緊急輸入制限)の発動を決めからだ。中国メディアでは「貿易戦争」「対米報復」といった勇ましい見出しが並び、一部にはオバマ大統領への批判すら見られるという。さすがは中国、日本とは反応が随分違う。

 日本のメディアでも本格的な米中貿易摩擦の幕開けとする報道が散見される。でも、本当にそうなのか? どうも胡散臭い気がしてならない。今回から数回にわたり、日米貿易摩擦とも対比しつつ、米中経済・貿易関係の実態を検証してみたい。

米中貿易の実態

 確かに米国の対中貿易赤字はすさまじい。過去3年間の赤字額は、2006年に2325億ドル、20007年が2563億ドル、2008年には2663億ドルにも達する。対米貿易黒字で中国が日本とほぼ並んだ2000年が837億ドルだったから、米国の対中赤字は過去10年で3倍になったことになる。

 2001年から2007年までに、中国からの輸入により米国内で230万人が失業したと米保守系経済シンクタンクは推算する。日米貿易戦争が本格化した1987年、米国の対日赤字が563億ドルに達して大騒ぎになったことを思えば、まさに隔世の感があるではないか。

オバマ米大統領、11月に中国訪問へ

11月の訪中を発表するオバマ大統領。中国製タイヤへの関税は保護主義ではないとも主張する〔AFPBB News

 本年3月、米国最大の労働組合AFL-CIOは、中国政府が「極端な輸出主導の経済成長モデル」を採用し、「通貨操作、労働者の人権侵害、違法な輸出補助金、不十分な環境・消費者保護政策、国内産業優遇税制」などを通じた不公正貿易により、世界各国で多くの失業を生みつつあると非難した。

 本年(2009年)9月に入り、米商務省は中国製鋼管に対する相殺関税の適用を仮決定した。オバマ大統領も1974年米通商法421条に基づき、自動車・軽トラック向け中国製タイヤ輸入急増に対する米国のセーフガード発動を決定した。全米鉄鋼労組(USW)などからの強い圧力があったことは間違いない。