2009年7月の米国株式市場は月間で8.6%の上昇となった。この原動力となったのが、市場予想を上回る順調な企業の4~6月期決算だ。しかし発表された決算の中には、米国経済の将来に警鐘を鳴らすべきリスク要因が潜んでいる。それは、不動産価格の下落スピードだ。このペースで下落が続くと、2010年にかけて再び不良債権が商業銀行に襲い掛かり、金融不安が再燃しかねない。(記事中の各種グラフも筆者作成)
市場はS&P500種の2009年4~6月期決算を30%以上の減益と予想していたが、実際の減益幅は10%程度縮小しそうだ。7月に決算を発表した主な米国企業の8割近くが、市場予想を上回る「ポジティブサプライズ」。これを受けて、米国株式市場は上昇基調に転じている。
しかし、決算は「予想を上回った」だけであり、決して増収増益ではない。雇用や設備投資を切り詰めるコスト削減の賜物であり、その持続性には疑問符を付けざるを得ない。米国消費者信頼感指数も雇用環境の悪化を鮮明にしており、企業のコスト削減が雇用不安を増幅している。となると、個人消費が盛り上がるはずもない。
陰に隠れる地銀決算の不振、背後に巨額の不良債権
予想以上の決算の陰に隠れてあまり話題に上らないが、地銀の不良債権問題への懸念は依然として払拭されていない。
2009年7月21日、地銀大手リージョンズ・ファイナンシャルは4~6月期決算を発表した。それによると、貸倒引当金が9億ドル以上と前年同期比で約3倍に急増したことが響き、2億4400万ドルの赤字を計上した。業績回復が著しいゴールドマン・サックスなど大手投資銀行との間で、明暗が大きく分かれる決算となった
ニューヨーク市場でダウ平均株価が回復を示す中で、リージョンズは不良債権が重荷になり、株価が冴えない。商業銀行が巨額の不良債権を抱える実態を見ると、米国の景気回復の腰は思ったほど強くない恐れがある。