8月30日は総選挙です。これで首相もいったん選び直しになるわけですが、私には麻生太郎首相にあらためて真意を聞いてみたいことがあります。
それは、麻生首相の医師に対する認識、特に「医師には社会的常識が欠けている」という発言についてです。
2008年10月25日、麻生首相はオタクの聖地、秋葉原で「オタクの皆さん!」と聴衆に呼びかけ、歓声を浴びました。
その後のインタビューで「『オタク』には世間一般的に狭くて暗いというイメージがあるが、それはマスコミが作ったもの。(中略)こんなに素敵な人生はないんじゃないかな」と述べ、オタクが次世代の日本のコンテンツ産業を担うスペシャリストであると語りました。
その一方で、約1カ月後の2008年11月19日に、麻生首相は医師のことを「社会的常識がかなり欠落している人が多い」と述べました。そして、その後すぐに「(医師は)おれと波長が合わない人が多いと思った。まともな医師が不快な思いをしたのであれば、それは申し訳ない」と釈明したのでした。
「オタク」とは本質的に、ある分野に没頭して一心不乱に取り組む人たちのことを指しています。そうしたオタクが「素敵」だというのには異論がありません。では、なぜ医療に懸命に取り組む医師は素敵ではなく、「社会的常識がかなり欠落している」と形容されてしまうのでしょうか。
コスト意識や礼儀作法が欠けている医師
麻生首相の「社会的常識が欠落している」という言葉は、地方の勤務医不足に関する議論の中で出た発言だと聞きます。麻生首相は自分で病院を経営していますので、いろいろな場面で医師と接触する機会が多いことでしょう。
そうした背景があって、「利益を追求しない(コストをあまり意識しない)医師が多い」ことや、「給料を高くしても地方に医師が集まらない」ことなどから、「社会的常識がない」という発言につながったのかもしれません。
実は、医師のことを「非常識」だと考えているのは、麻生首相だけではありません。週刊新潮には「非常識な医師は患者の常識」と題する記事が掲載されるなど、賛成意見もあったようです。
実際に世の中には、医師には社会人としての礼儀作法が欠けていると考える人が少なからず存在します。民間企業ならば、新人に対して電話の応対や名刺の受け渡し、お客様を案内する方法などを研修で教えます。ところが、医師に対してそういう訓練を行っている施設はほとんどありません。私もクリニックを開業する際に、必要に迫られて独学で覚えたくらいです。