バラク・オバマ政権は外国金融機関に対し、「外国口座税務コンプライアンス法(略称FATCA)」と呼ばれる新ルールを適用しようとしている。
新ルールに従わない場合、30%の源泉課税
従わない場合、30%と高率の源泉税が課される。この分だと、外国金融機関をいたずらに米国離れへ追い込みかねない。規制の詳細が明らかとなるに及んで、米国内では「外国資本を遠ざけるこんな規制など、経済的自殺に等しい」などとする反対意見が出始めている。
邦銀関係者の間でも、膨大な実務を強いるものとしてFATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)はつとにセミナーの主題となり、話題となっている。
その割に、昨今の本邦経済ジャーナリズムが受信解読能力をとみに落としている表れか、少なくともこの1年、邦字紙にめぼしい報道を見ない。
The Banker誌が本年5月1日号で報じたところによると、FATCAとは次のようなものである。簡便のため箇条書きにしてみよう。
(1) FATCA単体の立法化がなされたわけではない。本年3月、連邦議会上院が可決し大統領の署名を得て発効した雇用促進法(the Hiring Incentives to Restore Employment Act)が、内包した形。
(2) 目的は、米国人による徴税逃れをしらみつぶしにするためだ。どの口座が名義上あるいは実質上米国人の保有にかかるものなのか、外国金融機関は米財務省に対して報告しなくてはならない。
(3)具体的には、米国人の口座に関わる情報を、年に1度ずつ、外国金融機関は米内国歳入庁(IRS、日本でいう国税庁)へ報告しなくてはならない。これを守れない場合、当該金融機関がドル建て金融商品へ投資して得た所得に対し、一律30%の源泉税が課される(後で還付請求する道もあるにはあるが手続きがかなり面倒である)。
(4)いま言う外国金融機関の定義は広く、投資顧問会社や保険会社が含まれるのはもちろん、異業種企業がもつ金融子会社も対象となる。
(5)そればかりか、米国でドル建て商品に投資し収益を得ている外国系企業は、業種のいかんを問わず、10%以上の持ち株比率を持つ米国人株主がいるかいないか、具体的説明とともに明らかにしなくてはならない。報告し損ねた場合、やはり一律30%の源泉税が課されることになる。