ゴルフ界では、17歳でマスターズに出場した石川遼選手に注目が集まっています。大胆な挑戦や前向きの姿勢、さわやかな笑顔が人々を引きつけているのでしょう。

 石川選手はスタッフやキャディーに支えられてはいますが、ゴルフは最終的には1人で戦うスポーツです。成否は、選手自身がいかに厳しく、そして冷静に自分をマネジメントできるかにかかっています。彼が大きく育つのを期待したいと思います。

目指すのは侍ジャパンのチームワーク

 スポーツにはチームで戦う種目も多数あります。その代表例が、日本人が大好きな野球です。

 野球の特徴は、
(1)守備の時間と攻撃の時間が繰り返され、試合途中に考える時間が十分あること
(2)スコアボードの掲示によって、球場にいる全員が情報を共有できること
(3)状況ごとに取るべき行動がセオリー(定石)として確立していること
などかと思います。

 そしてその勝敗は、選手一人ひとりの精進だけでなく、チームワークと監督の采配に大きくかかっています。

 WBCで優勝を成し遂げた「侍ジャパン」のメンバーは、選手一人ひとりが「チームが勝つためには自分は何を成すべきか」を真剣に考え、プレイに集中し、お互いの健闘をたたえ合う姿が全国民に感動を与えました。

 祝勝会でイチロー選手がユニホームの中にシャンパンを流し込まれながら、「こんなふうに先輩へのリスペクトがない感じがチームワークを生んだ」と語っているシーンが印象的でした。眼前の目標に向かって、互いの今の力を信じ合い、助け合って、全力で取り組んだ結果なのだとイチロー選手は言いたかったのだと思います。

 優勝が決まった後の記者会見で、選手たちが「このチームで戦えたことが何よりうれしい」と互いにエールを送り合っていました。ライバルであるキューバのカストロ議長までがその姿を賞賛しました。

 この「侍ジャパン」のように強いチームワークで結ばれ、互いに切磋琢磨しながら協力して結果を出し、生き甲斐を持って働ける職場にすることこそが、「本流トヨタ方式」の目指す姿なのです。

指揮者が実現する全体最適

 WBCでは、トーナメントになって「後がない」段階になってから、さらに熱が入りました。「本流トヨタ方式」でも、在庫を減らして「後がない」状況を作ります。

 また本流トヨタ方式では、野球場で全員が同じ情報を共有するスコアボードのように、職場の置かれている状況を分かりやすく公開します。全員が同じ情報を共有することを「見える化」と呼び、チームワークある職場作りに励むのです。

 スポーツではありませんが、常に最高の品質を求められるオーケストラではどうでしょうか。メンバーの一人ひとりは素晴らしい腕前の演奏者たちです。しかし誰もが自分の演奏の世界に入り込んでしまうと、全体の音は崩れてしまいます。そこで指揮者という役割が欠かせなくなります。