米最大手自動車メーカーが1日、連邦破産法11条を申請した。11条申請をした製造業企業の資産規模としては過去最大という今回の動きは、オバマ政権を含む関係者の事前の動きから十分予想されていたことであり、市場へのサプライズはなかった。

 米株式市場ではむしろ、大きなイベントを無事通過したことによる安心感が広がり、アジア・欧州の株価がすでに堅調に推移していたこと、発表された米5月のISM製造業景況指数が5カ月連続で上昇したことも手伝って、買いが強まる展開。ニューヨークダウ工業株30種平均は前日比+221.11ドルの大幅高。終値は8721.44ドルとなった。

 米国の家計が借金とキャピタルゲインを足場にして膨らませてきた過剰消費が崩壊して、世界需要レベルが大幅に下方シフト。供給能力と現実の需要レベルの間に大きな乖離が生じたことから、「供給サイドのダウンサイジング」が着実に進展している。

 今回の経営破綻は、企業の供給能力削減や企業の数自体の減少がマクロ経済環境から求められている中での一コマという側面がある。

 米国の実質GDPを見ると、米国内外メーカーによる大幅減産を反映し、自動車生産の押し下げ寄与はこのところ大きなものになっている。2008年は前年比+1.1%成長に対して▲0.50%ポイント、うち10-12月期は前期比年率▲6.3%成長に対して▲2.01%ポイント、2009年1-3月期は同▲5.7%成長に対して▲1.36%ポイントである。

 また、米国の雇用統計を見ると、製造業のうち自動車・同部品の雇用者数は、2009年4月時点で67万6600人。前月から29万1000人、1年前からは22万1400人減少している。

 米国経済全体にとって、今回の破産法申請は、どこまで追加的な重石になるのか。この問題については、一定の仮定を置いて試算することも可能だが、自動車販売台数の回復ペース、自動車部品メーカーの連鎖的破綻の有無や他の自動車メーカーへの影響、新会社の経営がうまく軌道に乗るかどうかなど、流動的要素が少なくないため、現時点で確言することは難しい。

 リストラによって雇用者数が減り、新規失業保険申請者数が増加、失業率が上昇するなど、雇用関連統計に悪い影響が出てくることは間違いない。その一方で、かつて米国経済繁栄のシンボルであった自動車業界の経営危機が続いたにもかかわらず、先行き改善期待を足場にして、米国人の消費マインド指数がこのところ上向いているのも事実である。

 1つ間違いなく言えることは、米国の過剰消費が削ぎ落とされるプロセスは、この先もしばらく続くとみられることである。