旅先で人と会う時、1人と1人だと互いに相手を尊重し合うものである。しかし、もしもどちらか一方が1人で、もう一方が3人だと、3人いる方は相手を尊重しなくなる傾向がある。
さらに、もしもどちらかが1人で、もう片方が5人以上のグループだと、グループの人間は自分たちのことしか気にかけず、相手に配慮しなくなる。人間は集団になると、相手をないがしろにする傾向のある動物らしい。
だが、イラクの一般市民を殺している米国人も、パレスチナの一般市民を殺しているイスラエル人も、東シナ海で日本に断りなくガス田を開発している中国人も、竹島を不法占領している韓国人も、1対1で旅先で会うと常識があり、相手に対して思いやりもある愛すべき人たちである。人間は立場が同じなら、互いに助け合い、相手を尊重することができる動物なのだ。
旅の醍醐味は出会いにある。ラテンアメリカを放浪していて、まれにアジア人に出会うと、私は何とも言えない親しみと安心感を覚える。
イースター島で出会ったアジア系女性
チリは美食家の国だ。赤茶けた山や砂漠の中の幹線道路を走っていると、低い葡萄棚が延々と見渡す限り広がってくる。この葡萄から作られるチリのワインは、数々の世界のコンクールで金賞や優秀賞を獲得している。特にビーノブランコ(白ワイン)は格別に品質が良く、それでいて価格はフランスの同クラスの5分の1程度と廉価だ。
長い海岸線の沖合いには、冷たく、流れの早いフンボルト寒流がある。この冷たい海で育った魚介類は身が引き締まり、実に美味だ。食卓には魚介類にビーノブランコ。この国が美食家の国であるゆえんである。
今ここ!
チリの首都、サンティアゴからイースター島までは飛行機で5時間半。周囲には島らしい島が存在しない絶海の孤島だ。最も近い島でも東北東に約400キロメートルも離れている。
私はイースター島に到着すると、空港のロビーでキャンプやホテルの案内を吟味した。安い宿の個室は全て満員のようで、テントかドミトリーかバンガローという選択肢の中、私は島の中心から少し離れた個室のバンガローに宿泊することにした。
日が暮れると、地平線の上にきらめく星のまばゆさに驚かされる。南半球から見るオリオン座は北半球から見るものとは形が違う。また、数分ごとに無数の星が夜空を流れ、その神秘的な光景に、天体とはこういうものだったのかと感慨にふける。
翌朝、レンタルバイクを借りて島の散策に出かけた。モアイ像の石切り場であるラノララク、日本企業が修復に協力した15体のモアイがあるアフトンガリキ、磁場の存在する不思議な石があるアフテピトクラを周り、イースター島唯一の海水浴場、アナケナビーチの木陰にあるレストランに入ると、眼鏡をかけたアジア系の女性が分厚いガイドブックを眺めていた。