中年一人、世界を行く

タイのモルジブとしょうされるシミラン諸島。潜ればジンベイザメやマンタとの遭遇が期待できる海域である(写真は筆者、以下同じ)

 いまから35年前、バブル景気で日経平均株価の史上最高値3万8915.87円をつけた1989年12月。

 その半年前の6月、『彼女が水着にきがえたら(ホイチョイ・プロダクションズ原作、原田知世・織田裕二主演)』が公開されるなど、日本は空前のダイビング・ブームに沸いていた。

 当時、海外の南の島々では現地で働く日本人ガイドたちが、押し寄せる日本人客をもてなし、国内では沖縄や伊豆各地のダイビングセンターには色とりどりのウェット・スーツを着た客があふれていた。

 当時は20代、30代のダイバーが圧倒的で、年配のダイバーは少数派であった。いま、国内、海外のダイブセンターの日本人客は、かつてのダイビング・ブームの前後に始めた50代から60代が多くを占めている。

 ゴルフよりもお金がかかるダイビングを楽しむ若者は現在、少数派といえよう。

世界のビーチリゾートは欧米観光客で活況

 ヨーロッパに「心が満たされる者は富にも勝る」という諺がある。

 欧米人にとってバカンスは、「人間が元気に生きていくため必要なもの」とされ、今も昔も欠くことのできない重要な年中行事。

 もともとバカンスは「空(から)」といった意味があり、貴族や金持ちが、ぼんやりと何もしない時間のことを指した。

 その王道の過ごし方は、燦々と輝く太陽の日差しの下、白砂の美しいビーチでゆったりとデッキチェアに寝転がり、潮風に包まれながら、身体を小麦色に焼くことにある。

 タイの海辺のリゾート地プーケットのベストシーズン2~3月。ビーチでは欧米人が密、密、密とあふれ返り、バーやクラブはお祭り騒ぎが明け方まで続く。

 タイの南東部、シミラン諸島は世界有数のダイビングスポットとして知られている。

 インド洋に接するアンダマン海の多様な生態系に恵まれ、ジンベイザメ、マンタ、カジキ、ロウニンアジ、ギンガメアジ、イソマグロ、カメなどなど、魚影は世界屈指の濃さを誇る。

 タイ南部パンガー県タップラム港から北西76キロに浮かぶシミラン諸島は、その周囲が約140平方キロにわたって海洋国立公園に指定され、島々の色鮮やかなターコイズブルーの海と真っ白なビーチのコントラストが美しい。

シミラン諸島には世界各国から多くのダイバーが押し寄せる

 シミランとはマレー語で「9つ」という意味で、No1.フーヨン島、No.2パヤン島、No.3パヤン島、No.4ミアン島、No.5ハー島、No.6ホック島、No.7パユー島、No.8シミラン島、No.9バグー島と、シミラン諸島はNo.1からNo.9の9つの島で構成されている。

 また、シミラン諸島No.9バグー島の北約20キロに浮かぶボン島とタチャイ島、そしてボン島の北東に位置するリチェリューロックは、ジンベイザメやマンタなどの大物が高確率で見られる世界中のダイバーが憧れるダイビングポイントだ。