がん細胞は健康な人でも毎日3000個から5000個発生しているという。にもかかわらず、がんを発症しないのはなぜか?
人間が持っている免疫力ががん細胞を殺傷するからだ。その重要な働きを担っているのが、免疫細胞である。
血液中の白血球には、役割と働きが異なる様々な免疫細胞が混在している。例えば、異物を探し出し食べまくるマクロファージ、高度な連携プレーで異物を攻撃するT細胞やB細胞。
その中で、がん細胞に対して強い攻撃力を持つのがNK細胞(ナチュラルキラー細胞)だ。
T細胞やB細胞は、抗原抗体反応に代表されるように、複雑な連携プレーで攻撃態勢を作る、いわば訓練された軍隊組織のようなものだが、NK細胞は、野武士のような免疫細胞で、単独でがん細胞を見つけ攻撃する。
しかも、T細胞やB細胞よりもがん細胞に対する攻撃力が強いと言われている。
がんの天敵の数を1000倍に増やす「NK細胞免疫療法」
このNK細胞を増やし活性化することで、がんから体を守ろうというのが「NK細胞免疫療法」である。具体的には、患者の血液を50ccほど採取し、この中から白血球を分離する。さらにリンパ球だけを取り出して、無菌状態に保たれた最先端の培養施設で熟練の培養技師が約2週間かけて培養し、NK細胞の数を約1000倍に増やし、さらに活性を高めるのだ。これを生理食塩水とともに点滴で患者に戻す。
患者側にすれば、血液採取とその後の点滴を受けるだけなので、治療としては非常に楽だ。しかも免疫細胞は自分のものなので、副作用の心配はほとんどない。発熱を伴う場合もあるが、それは免疫が賦活されることによる主作用と考えることもできる。
横浜クリニックの青木晃院長は言う。
「1000倍に増やしたNK細胞の数は、健康な人が持っている数をはるかにしのぎます。がん患者は、免疫細胞の活性が健康な人と比較して低下しているので、この時点で攻守逆転の戦いが始まるわけです」