上原浩治や萩原智子といった元トップアスリートから、ボクサー・中谷潤人、サッカー日本代表・町田浩樹ら現役のトップアスリート、さらにはそれを支える栄養士、トレーナーなどをマネジメント。
チームを作ることであらなたマネジメント像を創造しているスポーツバックス。その代表取締役である澤井芳信氏が「スポーツマネジメント」を考察する本連載、今回は番外編として、野球界をけん引した「松坂世代のこれから」について言及する。
最後の「松坂世代」の引退
プロ野球界に「節目」のニュースが飛び込んできた。
ソフトバンクの和田毅投手が現役引退。ソフトバンク、メジャーリーグで日米通算165勝をマークした左腕。日本のプロ野球で現役を続けた最後の「松坂世代」の選手だ。
和田投手は島根·浜田高校3年時に夏の甲子園ベスト8。私が京都成章高の主将として決勝に進み、怪物·松坂大輔投手を擁した横浜高にノーヒット·ノーランで負けた1998年のことだ。
高校時代に対戦することがなかった和田投手と初めての“ニアミス”は、私が同志社大時代に東京遠征した際、和田投手が在籍していた早稲田大との練習試合だった。
高校時代の和田投手は、球速が130キロに届かないくらいの投手だった。ところが、大学入学からしばらく経ったころ、「早稲田の和田の球がめちゃくちゃ速くなっている」との噂が関西にも届いていた。
ところが、とても楽しみにしていた最初で最後の対決は「幻」に終わった。私が打席に立つ直前、和田投手がマウンドを降りたからだった。
その後、プロの舞台へ進んだ和田投手とはプライベートで会う関係となった。プロ野球選手として実績を積み重ねても、気さくな性格の「毅さん」(敬意を込めていつもこう呼んでいる)はずっと変わらなかった。
律儀な人間は引退発表にも表れていた。世間に公となる会見の日の前夜、電話をくれた。現役続行というニュースを目にしていたので、引退の報告だとは想像もしていなかった。
電話に出て「どうしたの」と聞くと、「実は明日、引退を発表するんだ」と言われ、驚いた。
「ほんとお疲れ様としか言えないけどおめでとう。プロ経験のない自分が言うことではないけれど、自分で引退を決められるのは選ばれた人にしかできないこと。ほんとにここまですごいわ」
労いの言葉を掛けさせてもらった。マネジメントをしているからこそ、その思いは強かった。
聞けば、シーズン中の7月には引退を決めていたという。