(英エコノミスト誌 2024年11月9日付)
次期大統領が何をするかは、どちらの娘婿の話を最後に聞くかで決まる可能性がある。
次期大統領として迎えた最初の日に、ドナルド・トランプ氏は中東を団結させた。
今では、2期目のトランプ政権誕生により米国の中東政策が様変わりするとの見方に誰もが同意している。
だが、その政策がどんなものになるかについては意見の一致が見られない。
トランプ氏の当選は恐らく劇的な変化の先触れだろうが、どちらの方向に進むかは、次期大統領が誰の話を聞くかによって左右される。
トランプ勝利を喜ぶイスラエル首相
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はすかさずご機嫌取りに動いた。トランプ氏の当選を「史上最大のカムバック」と形容し、最初に祝意を表した世界の指導者の一人になった。
トランプ政権ならパレスチナ自治区ガザとレバノンにおけるイスラエルの戦争を自由に続けさせてくれるとネタニヤフ氏は考えている。
米国からのしゃくに障る停戦要求はもう来ない(といっても、ジョー・バイデン現大統領の甘言に大きな効果があったということではない)。
ネタニヤフ氏がそう考える妥当な理由がある。
1期目のトランプ氏は、パレスチナ人の窮状にほとんど懸念を示さなかった。
ヨルダン川西岸の占領地におけるイスラエルの入植活動の拡大を支援したし、娘婿のジャレッド・クシュナー氏はイスラエル側にかなり肩入れした和平案を起草した。
だが、トランプ氏は中東を落ち着かせるとの公約を掲げて選挙戦を戦った。投票日の夜の勝利演説では「私が戦争を止める」と言った。
2023年10月以降に米国がイスラエルに行った軍事支援は180億ドル相当に上る。イスラム組織ハマスとの戦闘に関連して命を落とした米兵は少なくとも4人いる。
イスラエルには、トランプ氏がこの費用の大きさに怯み、自分がホワイトハウスに入る前に戦争を終わらせるようネタニヤフ氏に要求してくるのではないかと考える向きもある。
「大統領としての1年目にこの問題が影を落とすことをトランプが望んでいると本当に思うのか」と中東在勤のある西側外交官は問いかける。