はじめに
3月11日14時46分に発災した東日本大震災は、M9.0の超巨大地震、岩手・宮城および福島県沿岸を襲った大津波、これらによって引き起こされた福島第一原子力発電所のレベル7相当の事故という三重苦の大災害となり、死者・行方不明者も2万5000人弱で、まさに未曾有の災害となった。
日本が経験した3大震災の中で、今次大震災は福島原発事故が絡んでおり、大規模広域複合事態の災害となった。
福島原発の対応に関しては、事実関係が小出しにされ、いまだに全貌が明らかになっているとは言い難いが、現時点までに明らかになった事項を基にして、特に初動対処上の問題点を浮き彫りにしたい。
政府や東電に対し批判がましい点が多々あるが、その点は危機管理を所掌する立場にある者や機関は甘受すべきであろう。貶める目的では決してないことをあえて付言しておきたい。
2 初動対処の重要性
危機管理、特にクライシスマネジメントにおいては、事態発生直後の迅速かつ的確な対応が極めて重要である。初動において対応を誤ると事態はますます悪化し、対処措置も後手後手となり、遂には最悪の結果をもたらす。
逆に迅速・的確な初動対処措置が行えれば事態はハンドリング可能となり、収束させることが可能である。
この初動対処のための危機管理マニュアルや対処マニュアルが整備され、それらに基づき必要な資器材が準備され、訓練がなされているはずであり、なされていなければならない。危機管理、特に初動対処の重要な原則である「悲観・最悪の原則」がこれである。