主見出しの命題をJBpress編集部から与えられ、ちょっと憂鬱な気分になった。日本政治への批判を見るのが厭なのではなく、それが全く無視されているのではないかと怖かったからだ。

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 1995~2005年、「日本ウオッチャー」の端くれとして私はワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)に在籍していたため、米国のフラストレーションを大体想像できる。

 先に結論を言うと、日本政治はまだ完全には見捨てられていない。なぜなら、その無力に対する論評が存在するからだ。たとえ厳しい論調でも、それがある限り、まだ救いも期待もある。むしろ、以下に紹介する日本ウオッチャーが、辛口の意見すら発しなくなれば、日本は世界の関心事から消えてしまう。とはいえ、米国の専門家による日本の政治指導者に対する評価はかなり厳しい。

 まずは、最も厳しいところからいく。ニューズウィーク国際版(2009年4月22日号)に掲載されたマサチューセッツ工科大(MIT)のリチャード・サミュエルズ教授による「Japan's Lost Leaders」(日本語版「リーダーが消えた国ニッポン」)は、次の痛烈な書き出しで始まる。

高級店が立ち並ぶ東京・銀座のど真ん中に火星人が舞い降りて、「この国のリーダーに会わせてくれ」と言ったとする。(中略)だが今そんな質問をされたら、ほとんどの日本人は困惑するだけだろう。火星人はがっかりして消えてしまうに違いない・・・。

 私の親しい友人であるサミュエルズ氏は、米国における日本研究の第一人者。日本の外交史を丹念に研究し、「日本には戦略がない」とされる常識を疑う。その上で、明治の「富国強兵」、昭和の「近衛新体制」や「吉田ドクトリン」を例に挙げ、歴史上の節目節目では日本でも大戦略がコンセンサスとして共有されていたと指摘する。

 そして現在の日本では、極端に強硬でも軟弱でもなく、アジアにも欧米にも寄りすぎない「ゴルディロックス・コンセンサス」という形で、合意が成されつつあるいう仮説を立てている(サミュエルズ氏の近著『日本防衛の大戦略:富国強兵からゴルディロックス・コンセンサスまで』日本経済新聞出版社)。

 したがってニューズウィークへの寄稿でも、サミュエルズ氏は「日本は伝統的に有能なリーダーを輩出してきた」と強調している。ところが今や、「麻生や小沢に代わるまともな指導者がいない」と懸念するのだ。

 そして、「日本はこのままでもやっていけるかもしれない。だが、中国が発言力を強め、米中の関係改善が進む中、経済的にも政治的にもその影響力が弱まる一方だろう」と警鐘を鳴らす。日本が「ゴルディロックス・コンセンサス」を実現するミドル・パワー(中程度の影響力を持つ国)として生き残るにも、リーダーシップが全く不足していると指摘する。