MRIC by 医療ガバナンス学会
被災地で避難所からの域外搬送に関する活動をしている友人から届いたメールが、役所の窓口業務の実情をよく示している。
お役所仕事
「リウマチの女性が手首を腫らし、痛みに耐えていました。あるメーリングリストで、沖縄が県を挙げて受け入れをしていると知り、彼女はその避難所から沖縄への移住を希望しました」
「沖縄の担当者に連絡をすると、『罹災証明申請書のコピーが必要です』『沖縄は県の予算で受け入れるので、飛行機に乗るのは5人まとまってからです。飛行場までは自分で来ていただき、そこでチケットをお渡しします』『インターネット上の申込書を印刷して書きこんでください』と、担当官に告げられました」
「非常に困難な条件で、少なくともパソコンとプリンターを持った援助者と、飛行場までの足、罹災証明書の申請を行うために市役所に行くという手順をその女性が手配しなければ不可能なのです。責任者の方とお話ししましたが、らちがあきませんでした」
大震災への対応は科学に似ている
大震災は行政の都合に合わせて発生するわけではない。想定していないことでも対応しないといけない。しかも、迅速性が決定的な意味を持つ。
入手可能な情報で状況を判断し、被害を小さくし、多くの被災者を救援するための最適な行動をとりあえず決める。それを実行しつつ結果を観察、あるいは想像する。不十分な検証に基づいて、次の対応を考えていく。
意外に思われるかもしれないが、この過程は科学に似ている。
科学は未来に向かっての営為である。「学問がその理論の仮説的性格と真理の暫定的な非誤謬性によって安んじて研究に携われるまで、学問研究の真理性は宗教的に規範化されていた」〔ニコラス・ルーマン(ドイツの社会学者)〕。このため、ガリレオは宗教裁判で裁かれた。