4月上旬、イオンやセブン&アイ・ホールディングスといった大手流通グループが2009年2月期決算を発表した。世界的な消費不況の大波をもろに受け、軒並みさえない内容である。

 はたして今般の業績不振は、一過性のものなのか。筆者は、「否」と見る。

 今回のななめ読みは、投資家やアナリスト、関連業者らの声を集め、岐路に立たされた日本の大手流通業者の姿を浮き彫りにする。

ビジネスモデルの逆回転が始まった

 「ビジネスモデルが完全に逆回転を始めた。ポートフォリオから外すよ」・・・。イオンの前期決算発表後、海外運用会社のファンドマネジャーが筆者にこんな言葉を漏らした。

 同マネジャーは以前から同社株の持ち高を漸次減らしてきたが、直近の業績動向を受け、「持ち高ゼロ」の決定を下したというのだ。

 この運用会社は「ブルーチップ」と呼ばれる日本の有力企業を様々なセクター(業種)から拾い上げ、巨額の運用資金を投じてきた。流通大手のイオンを外すというのは穏やかではない。

 イオンの2009年2月期連結決算は、営業利益が前期比20%減の1243億円、純損失は27億円となり、7期ぶりの赤字となった。主力の総合スーパー(GMS)事業の不振が業績を直撃。ここ数年、全国各地に積極展開し、収益を稼ぎ出してきた大型商業施設の戦略が裏目に出たのだ。

 決算の内容が悪かったのは、昨秋の世界金融危機に端を発した消費不況の影響だけではない。一昨年から高騰を始めたガソリン価格も一因。むしろ、ここに弱点があったと言っても過言ではない。

 イオンが展開する主力スーパー、ジャスコを軸とする大型商業施設のほとんどは郊外に立地し、車で買い物に行くのが定番スタイル。すなわち、昨年のガソリン高で客足が鈍っていたところに、世界的な不況が加わったのだ。

 巨大なショッピングセンター(SC)を各地に展開する過程では、傘下の不動産開発業者イオンモールが潤い、各種カード事業の金利収入などで収益を稼ぎ出してきた。このビジネスモデルの根幹が岐路に立たされている、という構図だ。

 「ビジネスモデルが逆回転を始めると、あとは加速度的に体力が低下していく」。件のマネジャーは不気味な予想を口にした。体力の低下とは、客足がさらに落ち込む、ということだ。

 その兆候はすでに表れている。具体的に見ていこう。