千代保稲荷神社 写真/Yama / PIXTA(ピクスタ)
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(吉田さらさ・ライター)

東海三県での人気は絶大

 今回はわたしの故郷、岐阜県南部にある千代保稲荷神社(ちよほいなりじんじゃ)をご紹介しよう。興味深い神社を探して日本中を旅しているが、自分が幼いころからよく知っているこの神社がこれほど面白いとは、今まで気づいていなかった。地元では「おちょぼさん」と呼ばれ、昔から初詣の定番だった。わたしが生まれ育った岐阜市中心部とは少し離れているが、近所の人々は何かにつけておちょぼさんに出かけ、参道で買ったというお菓子をもらうこともよくあった。おそらくレジャーを兼ねたお参りに最適な距離感だったのだろう。

 それから何十年もたったが、現在でも年間の参詣者数は120万人にのぼるとのことだ。全国的に有名というわけではないだろうが、東海三県(岐阜県、愛知県、三重県)あたりでは、この神社の人気は絶大のようだ。

 稲荷神社の主たるご利益「商売繁盛、家内安全」を求める会社経営者や自営業、商店主の方々から篤く信仰され、月に一度のお参りを欠かさない人もいると聞く。年末年始だけでなく、毎月1日、15日、22日の月次祭の人出も多く、そうした日は岐阜市内の繁華街などよりはるかに混雑する。とりわけ毎月末日(みそか)から翌1日にかけての「月越参り(つきこしまいり)」では、前月のお礼と翌月のお願いをする人々で境内がごった返す。参道の両側にある店々も夜通し営業し、まるで昼間のような賑わいだ。

 もともと神社とは人の暮らしに直結する願いごとをする場所であり、願いが叶えばお礼をするものだった。地域で信仰される神様と住民との密接な関係。古くから日本各地に根付いてきた信仰の原型が、ここでは今も生きているのだ。