独特のお参り方法
千代保稲荷神社 写真/Yama / PIXTA(ピクスタ)
参道に戻ってさらに歩くと、左手に大きな鳥居がある。いよいよ千代保稲荷だ。まずは神社名の由来から。わたしは子供のころ「おちょぼさんには千代ちゃんという小さい女の子が住んでいるのだ」と信じていたが、それはもちろん違う。平安時代、源義家の六男である義隆が分家する際に「森」という姓を授かり、先祖の霊璽(れいじ、亡くなった人物の霊を祀る木札)、宝剣(ほうけん)、義家の肖像などを賜り、「これらを千代代々に保っていけ」と言われた。
その後、今から550年ほど前の文明年間に、義隆の子孫 森八海(もりはちかい)という人物がこの里を開墾し、義家から伝わる霊璽を祀ったのがこの神社の始まりだ。つまり神社名は「千代に保つ」に由来している。祭神は大祖大神(おおみおやのおおかみ)、稲荷大神(いなりおおかみ)、祖神(みおやのかみ)。なるほど、霊璽を千代に保つための神社であるから、稲荷大神だけでなく、ご先祖様を神として祀っているのか。
それほど広くない境内だが、いろいろと密度が濃く、独特のお参り方法もある。まずは油揚げとろうそくを求め、真ん中の燈明場でろうそくを上げる。そして、拝殿で油揚げを献じてお参りする。稲荷大神の眷属であるキツネ像を収めた霊殿でお参りする際は、扉に名刺を挟んで行く人が多い。理由ははっきりわからないが、この神社の信奉者は自営業者や社長さんが多いとのことなので、「うちはここです。商売繁盛をお願いします」と念押しする意味があるのだろうか。
さらにはお百度を踏むための百度石、願い事が叶うかどうかを占う重軽石もあるので、特別なご祈願がある人はぜひ。ここで注意しておきたいことがひとつある。古くからの慣わしにより、この神社ではお札やお守りは授与されず、ご朱印の記帳もない。したがって、境内には古いお札をお納めする場所もないので、他の寺社で受けたお札類を持参するのはやめよう。
