二刀流を選んだスーパースターだからこそ課せられる命題

 今回のWBCで大谷は確かに「投げない」。だが、投手としては「止まれない」。この“ねじれ”こそが、大谷の合流以降の侍ジャパンに独特の緊張感を持ち込む。

 投手としての完全復帰を今季の主題に据える以上、代表参加中も腕を“休ませる”のではなく“保つ”あるいは“出力を上げていく”作業が必要になる。実際に日本出発前の段階でアリゾナ州グレンデールでのスプリングトレーニングにおいてはブルペンを重ね、ライブBPにも臨んだ。

ドジャースの春季キャンプでピッチングする大谷翔平=2月22日(写真:AP/アフロ)

 しかもWBCの日程は移動を伴い、勝ち進めば3月中旬まで戦う可能性もある。開幕へ向けた逆算を、国際大会のスケジュールが容赦なく揺さぶる。

 この“投げない投手”の調整は本人の体の問題ではなく、当然ながら周囲の設計の問題だ。ドジャースにとって大谷は「もう一人の先発」ではなく「もう一つのローテの思想」である。

 だから代表では打線の中核として出場しつつ、舞台裏では投球強度を落とさない――という困難な要求が、水面下においての球団側の長期設計と同義になるドジャースのデーブ・ロバーツ監督が「WBCでは打者専念」を強調しつつも、ドジャースでの投手復帰の具体的な時期については線を引き過ぎず柔軟に見る姿勢を示したのも、こうした現実を映している。

 そして、この変則的な立ち位置はグラウンド内の話だけでは終わらない。大谷は前回より年齢も立場も上がり、代表の「中心」に座る。