ピッチング調整を続ける大谷を「投手」として起用できない井端監督

 一説には1次ラウンドC組の日程上、侍ジャパンの試合が組まれていない3月9日に大谷が東京ドームのブルペンで投球練習を行い、場合によってはライブBPも敢行されるのではないかとの情報も漏れ伝わっている。

 ただし繰り返すが、これはあくまでもドジャースの2026年レギュラーシーズンで二刀流本格復帰を果たす上での調整であり、すでにWBCでは大谷自身も「投げない」と明言していることから侍ジャパンのためではない。

 その本人も、この「投げないのに止まれない」ねじれを分かっている。米アリゾナ州グレンデールで2月22日(日本時間23日)にドジャースのスプリングトレーニングを打ち上げた際には「最後に(ロサンゼルス・エンゼルスのマイク・)トラウトが出てくるなら(投手も)あるかも」と笑ってみせ、現地訪問中だった侍ジャパン前監督の栗山英樹氏も「最後は俺いきますと言うと思う」と口にした。

 だが今回はWBCでの登録が指名打者の野手扱いで、規定上そのままでは投げられない。しかもトラウトは今大会不出場が決まっている。つまり両者の言葉は、現実の起用を示唆するものというより、熱と記憶が生んだ“冗談と願望”の類だ。

 国際大会特有の熱とスケジュールが、復帰ロードの微妙なバランスに容赦なく触れてくる格好と言えそうだ。

 そしてもう一つ、見えないハードルがある。2023年の第5回WBCは、北海道日本ハムファイターズで新人時代から誰よりも大谷と間近で接し続けていた栗山英樹監督という「二刀流スーパースターの扱い方を知り尽くした指揮官」がいた。

 今大会で侍ジャパンを指揮するのは井端弘和監督だ。

 もちろん日本代表は「組織」として動くが、超一流・大谷の調整はやはり最後に個と個の距離感で決まる。

 投げないのに投手調整は必要。勝たねばならないのに投手としては起用できず、たとえブルペン入りしても本番のマウンドに立たせることはできない――。こうした大谷に関わる大きな矛盾とジレンマを抱えたまま、井端監督率いる侍ジャパンの「3月」が始まろうとしている。