巨大AI企業へと脱皮するバイトダンスの野望

 先月の合意は、バイトダンスにとって単なる危機の回避ではなく、グローバルなAI覇権を狙うための「免罪符」となる可能性がある。

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、バイトダンスの2024年の売上高は1550億米ドル(約24兆円)に達し、一時的に米メタを抜いて世界最大のSNS企業となった。

 バイトダンスは現在、対話型AI「豆包(ドウバオ)」を軸に、膨大な計算資源への投資を加速させている。

 米エヌビディア(NVIDIA)製チップの主要顧客としての地位を確立し、2026年だけで140億米ドル(約2兆2000億円)規模の半導体購入を計画するなど、その資本力は中国国内の旧来のネット大手を圧倒している。

 米国事業の不透明感が払拭されたことで、同社は世界のトップティア技術企業として、AI覇権争いの中心に返り咲いた。

断ち切れぬ「デジタルな依存関係」、技術分断が促す「奇妙な共生」

 米国側にとって、今回の複雑な合意が実行段階でどこまで実効性を持てるかは、依然として予断を許さない。

 オラクルによるデータの監視やアルゴリズムの監査が、中国側の潜在的な影響力を完全に排除できる保証はないからだ。

 また、この「米国モデル」が他国の規制当局にどのような影響を及ぼすかも未知数である。

 米国政府や特定の企業が勝利を宣言した一方で、実態としては米中双方が「デジタルな依存関係」を完全に断ち切ることができなかったという事実が残った。

 今後、生成AIの進化に伴い、データの主権とアルゴリズムの透明性を巡る議論はさらに深化するだろう。

 技術分断とグローバルな市場統合という二律背反をどう制御していくのか、この「奇妙な共生」の真価が問われることになる。