保険問題が結果的にWBCの価値を損なう可能性も
問題は、これが一国の例外ではないという点だ。保険の網からこぼれ落ちる選手が増えれば、国際大会は看板選手を欠いたまま進む。競技の質と熱量が削がれ、結果として大会そのものの価値が問われる局面に入っている。
WBCにおける保険は、例外的な付帯条件ではなく、大会運営の前提として組み込まれている。MLBとMLB選手会が共催するWBCでは、メジャー40人枠に入る出場選手全員が、両者が合意した保険会社の審査を受ける仕組みになっている。
年俸補償を引き受けている中心的な窓口は、米国の保険ブローカー大手であるNFP(National Financial Partners)だ。大会期間中に負傷し、所属球団の試合を欠場した場合、当該期間の年俸を保険でカバーし、球団へ払い戻す。逆に言えば保険が認可されなければ、球団は高額年俸のリスクを丸ごと背負う。
2026年大会からは、37歳以上の選手には保険が適用されないという新たな条件も導入されている。制度としての線引きは明確でも、影響は一様ではない。つまり、この新条件導入は年齢や稼働の履歴が重なる選手ほど、出場可否が不透明になる流れを意味している。
重要なのは、保険の可否が競技上の評価とは別の次元で判断される点だ。保険が通らなければ、たとえ代表に不可欠な戦力であっても、起用は現実的な選択肢から外れる。WBCは国際大会でありながら、MLBの資産管理という論理から切り離されてはいない。
競技の公平性や代表チームの成立が保険審査の結果に左右される状況が常態化すれば、国際大会としての姿は歪んでいく。国を背負って戦う舞台で、戦力が条件付きで扱われる。そうした構図が常態化すれば、WBCは「世界一決定戦」としての説得力を保ちにくい。大会の価値をどこに置くのか。保険と競技性のバランスをどう再設計するのか。WBCは今、その根本的な問いを突きつけられている。


