「単なる不記載」と済ませられない自民党の法軽視

 自民党の派閥における政治資金パーティーを巡る不記載事件、いわゆる「裏金問題」は、単なる事務的なミスや一部の不注意といった説明では到底看過できない、組織的かつ執拗な法軽視の姿勢が浮き彫りになった点が特徴的である。

 この問題を、他党でも起きている「単なる不記載」と同列に論じる向きがある。だが、それはすり替えにほかならない。

 自民党の事案が深刻なのは、その金額の規模、手法の悪質さ、そして何より地方組織にまで及ぶ構造的蔓延の可能性という3点において、他党の追随を許さない特異性を備えているからである。

 まず、金額の規模に着目しなければならない。旧安倍派(清和政策研究会)の会計責任者が立件された際の不記載額は約13.5億円に上り、二階派(志帥会)では約3.8億円という、途方もない数字が並ぶ。

社説:萩生田氏秘書に罰金刑 裏金問題の責任免れない | 毎日新聞  

 他党で見られる数万から数十万円程度の記載漏れや修正とは、文字通り桁が違うのである。2025年8月には、萩生田光一氏の政策秘書が約1900万円の不記載で略式起訴され、罰金30万円、公民権停止3年の略式命令を受けている。

 検察審査会が「起訴相当」と議決したことで、一度は起訴猶予とされた判断が覆された形である。萩生田氏本人の不記載総額は5年間で2728万円に達し、党内で3番目に多い金額であった。この「数千万円単位の不記載」が平然と行われ、常態化していた事実は、法を遵守すべき立法府の構成員として政治家の資質に根源的な疑義を抱かせるものであるというほかあるまい。

 次に、その手法の悪質性である。今回の問題で明らかになったのは「キックバック不記載」と「中抜き不記載」という二つの手法だ。

 派閥が設定したパーティー券販売ノルマの超過分を、一度派閥に納めた後に議員側に差し戻すのがキックバックであり、これを収支報告書に記載しないことで裏金化していたのである。

 どちらも悪質性が高いが、より悪質なのは「中抜き」だと筆者は考えている。これはノルマ超過分を最初から派閥に納めることなく、議員の手元で「無かったこと」にして着服する手法だ。

 キックバックであれば「派閥からの戻し時期がズレて記載を忘れた」という言い訳も(極めて苦しいが)成立する余地があるかもしれない。だが、中抜きは最初から組織の会計から除外することを企図しており、そこには明確な「意思」が介在しているからだ。中抜きという行為は、主体性がなければ成立しないのは明らかだ。

 また、自民党においてはこのような不適切で不透明な資金循環が、国政レベルのみならず地方議会にも波及している事実が明らかになっている。

 2025年1月、東京地検特捜部は都議会自民党の会計担当者を政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で略式起訴した。パーティー券販売で都議1人あたり50枚、金額にして100万円分の販売ノルマがあり、それを超えて100枚目までは全額を、101枚以上については半額を会派に納めずに手元に残す「中抜き」が組織的に行われていたという。不記載総額は約3500万円に上り、東京簡易裁判所は会計担当者に罰金100万円、公民権停止3年の略式命令を出している。

 地方から国政に至るまで、自民党という組織が抱える「カネの処理」に対する甘えは、もはや一朝一夕の改革で拭い去れるものではないというほかないだろう。