物価高を強いられる国民感覚と乖離している

 旧安倍派では、安倍晋三元首相が還流の廃止を一度は決めたにもかかわらず、同氏の死去後に再開された経緯があるが、その過程の詳細は今なお不明のままである。自民党が組織としてこの「真実」を究明する姿勢を見せない限り、説明責任が果たされたとは到底言えないだろう。そして自民党に、党幹部から発せられる言葉とは異なり、その姿勢はまったく見られない。

 2024年の衆院選後、自民党内からは「選挙でみそぎは済んだ」との声が上がった。2026年1月に発表された次期衆院選の第1次公認候補284人には、裏金関係議員37人が含まれている。

自民、1次公認候補284人を決定 裏金議員は37人 衆院選 | 毎日新聞  

 選挙で当選したことが免罪符になるという論理は道義的にわからなくはないが、気をつけないと法の支配を形骸化させるものである。衆参の政倫審に出席して弁明した議員の大半は「記憶にない」「承知していない」という答弁に終始して、真相解明に寄与しなかった。73人に対して全会一致で審査が議決されたにもかかわらず、出席を拒否したまま24年の通常国会が閉幕したという事実は重い。

裏金議員73人、政倫審に応ぜず閉会 「レッテル貼られるだけ」:朝日新聞  

 令和の日本社会において、国民は物価高や不透明な経済情勢の中で、1円単位の支出に慎重な生活を強いられている。一方で、政治家たちが数千万円単位の金を「記載漏れ」として処理し、かといって税金や延滞利息を払うわけでもなく、法を形骸化させている姿は、あまりにも国民感覚から乖離している。

 自民党が自浄能力を発揮できないのであれば、外部からの監視と、選挙を通じた厳しい審判以外に、この負の連鎖を断ち切ることはできないのだろう。

 政治資金の透明化は、抽象的な意味でのクリーンな政治の実現を目的とするものではなく、不当な利益供与や業界団体との癒着を防ぎ、公共の利益に資する政策決定を担保するための民主主義のインフラであるべきだ。

 このインフラが崩壊している現状を直視し、法の支配を再構築することこそが、今も変わらず日本の政治に突きつけられている最大の課題であることを眼前の総選挙の前に何度でも思い出すべきだ。

 自民党の政治とカネの問題は、他党の不記載と同じではないのである。

 わかっていただけただろうか。