ベトナムとフィリピンにはなぜパンダがいないのか

 東南アジアに目を向けると、パンダはタイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールに貸与されている。だがベトナムとフィリピンにはいない。

インドネシア・サファリパークの上級獣医師で生命科学担当副社長ボンゴット・フアソ・ムリア氏が記者会見で紹介した、インドネシアで初めて誕生したジャイアントパンダの赤ちゃん「サトリオ・ウィラタマ(愛称:リオ)」の映像(資料写真、2026年1月6日、写真:AP/アフロ)

 近隣であり経済的な交流もあるベトナムとフィリピンに、なぜパンダがいないのであろうか。その答えは、ベトナム人とフィリピン人の多くが心底から中国を嫌っているためだといってよい。中国からパンダを貸与されても、ほとんどの人は喜ばない。中国としても喜ばれないのであれば貸与する価値がない。

 ベトナムとフィリピンの多くの人が中国を嫌う理由はそれぞれ異なる。ベトナムは約2000年前に中国の植民地になり約1000年前に独立したが、その後も中国は何度もベトナムに攻めて来た。直近では1979年の中越戦争がある。このような歴史があるためにベトナム人の多くは中国を憎み嫌っている。

 フィリピンの事情はベトナムとは異なる。フィリピンと中国の間には海がある。そのために昔から交流が活発だったわけではない。現在、両国は南シナ海の環礁の領有権を巡ってもめているが、フィリピン人が中国を嫌う理由はそれだけではない。真の理由は華僑がフィリピン経済を牛耳っているからだ。フィリピンは格差社会である。その格差の頂点に華僑系財閥が存在する。そのために多くのフィリピン人が中国人を嫌っている。

 こんなエピソードもある。ドゥテルテ前大統領は麻薬犯を裁判にかけずに殺害したとして、現在オランダの国際刑事裁判所に拘束されている。そのドゥテルテは2016年に中国を訪問し、習近平主席と会談した。その際にガムを噛みながら習近平と握手するシーンがあった。これはずいぶんと失礼な態度であるが、自国民に対して精一杯のアピールをしたとみることができる。

 ドゥテルテは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いであった中国から資金を得て経済開発を行いたいと考えていた。一方、中国はフィリピンが米国から離れて中国に接近することを歓迎した。しかしフィリピン国民のほとんどはそれを喜ばない。そのためにガムを噛む場面を放映させて、自分が習近平に阿(おもね)っていないことをアピールしたと考えられる。このようなことをしなければならないほど、中国を嫌っているフィリピン人は多い。