ソウル中央地裁は2月19日に予定されている内乱首謀罪判決の前の1月16日、捜査妨害などの罪で尹錫悦前大統領に懲役5年の実刑判決を下した(写真は1月16日、ソウル中央地裁前に集まった前大統領の支持者、写真:AP/アフロ)
歴代大統領に共通する退任後のリスク構造
(本文敬称略)
韓国では、歴代大統領の多くが退任後に法的・政治的問題に直面してきた。これは個々の人物の資質に還元できるものではなく、制度構造・政治文化・権力配置の特性が生み出す「構造現象」として理解すべきである。
現在進行中の前大統領・尹錫悦(ユン・ソンニョル)に対する内乱首謀罪裁判では、検察が死刑を求刑し、判決公判は2026年2月19日に予定されている。
その判決内容と、それに対する韓国世論の反応は、今後の政治情勢を大きく左右する可能性が高い。
歴代大統領の事例を振り返ると、その連続性は明白である。
• 朴正熙:暗殺(退任前だが権力闘争の象徴)
• 全斗煥:光州事件で起訴・死刑判決(後に特赦)
• 盧泰愚:不正蓄財で実刑(後に特赦)
• 金泳三:本人は無罪、息子が汚職
• 金大中:本人は高評価、息子が汚職
• 盧武鉉:退任後の捜査中に自死
• 李明博:収賄・横領で実刑(後に特赦)
• 朴槿恵:弾劾・実刑(後に特赦)
これらの事例は、韓国政治における「制度的宿命」を象徴しているだけでなく、歴代大統領の退任後の軌跡には、いくつかの共通した構造的パターンが見て取れる。
第1に、権力の集中がもたらす反動の強さである。
朴正熙・全斗煥・盧泰愚の軍事政権期には、大統領権限が極端に肥大化し、その反動として退任後に強烈な司法的・政治的清算が行われた。
権力の集中が大きいほど、退任後の反動もまた激しくなるという構図が繰り返されている。
第2に、「側近・家族」が弱点となる構造である。
金泳三・金大中のように本人が直接の刑事責任を問われなかったケースでも、息子や側近の不正が表面化し、政権全体の評価を大きく損なった。
韓国の大統領制では、権力が個人に集中するため、家族・側近の行動が「政権の延長」として扱われやすい。
第3に、政治的対立の激化が退任後のリスクを増幅する。
盧武鉉の自死は、捜査の厳しさだけでなく、政権交代後の政治的緊張が極度に高まった状況が背景にあった。
朴槿恵の弾劾も、政治的分断が極限まで達した局面で発生している。韓国政治のゼロサム性が、退任後の大統領を「政治闘争の焦点」に押し上げる。
第4に、特赦という「政治的出口」が制度化されている点である。
全斗煥・盧泰愚・李明博・朴槿恵のいずれも、最終的には特赦によって政治的決着が図られた。
これは韓国政治における「清算と赦免の循環構造」を示しており、退任後リスクが高い一方で、最終的には政治的妥協が成立するという二重構造が存在する。
以上のように、歴代大統領の退任後の軌跡は、権力集中 → 反動 → 清算 → 特赦という循環を繰り返しており、今回の尹錫悦前大統領裁判も、この構造の延長線上に位置づけられる。