養殖ホタテは中国依存から脱却したのか?
中国は、東京電力福島第1原子力発電所の処理水海洋放出をきっかけとして2023年8月から日本産水産物の全面禁輸措置をつづけてきたが、2025年11月5日に日本産ホタテの輸入を再開した(拙稿「中国、トランプ関税、海水温の上昇、貧しくなった日本人……北海道のホタテ産業に次々と襲いかかる苦難」を参照)。
ところが、11月19日に中国政府は、日本産水産物の輸入申請の受け付け停止を通知してきた。函館でも対中輸出の再開手続きをすすめていた加工業者もいたが、影響はあまり大きくないと考えられる。
まず、養殖に必要な稚貝の数が少なく、養殖ホタテの数に限りがある。北海道南部の日本海側でも、太平洋側の噴火湾でも海水温が高く、また海水の酸性化が進んでいるようで、稚貝が溶けているとの話が聞かれる。
また、やはり海水温の上昇もあって、プランクトンが異常発生し、11月に入ると噴火湾で貝毒が発生、出荷ができない地域が出た。
さらに、中国による禁輸措置が始まると、北海道のホタテ業者は東南アジアに加工場を移すとともに、米国向けの製品開発を続けてきた。中国がいくらホタテが欲しくても、売る分はもはやないのだ。
なお、函館空港は中国とはつながっていないが、台北やソウルとの直行便があるので、台湾人や韓国人が多く来函する。また、東南アジアから雪を見にくる観光客も多い。クルーズ船も多数入港する。函館に来るインバウンド観光客において、中国人が大多数を占めるということはなかった。日中対立が道南・函館の観光業に与える影響も大きくないだろう。