米軍がベネズエラ沖でタンカーを拿捕した(提供:U.S. Attorney General's Office/X/AP/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=57ドルから60ドルの間で推移している。先週末に約2週間ぶりの高値(60.5ドル)を付けた後、売りが優勢となり、60ドル割れの状況が続いている。

 まず原油市場を巡る動きを確認してみたい。

ロシア産原油の供給懸念

 市場の関心はロシア産原油の供給懸念だ。

 ウクライナ政府は12月10日、黒海の排他的経済水域をロシアのノボロシースク港に向け航行していたタンカーに対し、水上ドローン(無人艇)で攻撃する様子を捉えた映像を公開した。ウクライナがロシアの「影の船団」とみなす船舶に対して水上ドローンで攻撃するのは過去2週間で3回目だ。

 ロシアとウクライナの和平交渉に進展がない中、西側諸国がロシアへの経済制裁の強化を検討していることにも注目が集まっている。ロイターは12月5日「欧州連合(EU)と主要7カ国(G7)はロシア産原油輸出の価格上限措置から海上輸送の全面禁止へと対策を強化するため協議を進めている」と報じた。

 G7などは2022年にロシア産原油の価格上限制度を導入した。ロシア産原油の買い手の購入価格が上限未満の場合に限り、西側諸国の船舶と保険が利用できる仕組みだ。上限価格は当初、1バレル=60ドルだったが、今年9月に47.6ドルに引き下げられた。

 独立系非営利研究機関CREAによれば、ロシアから海上で輸出された原油の38%を欧州諸国(ギリシャやマルタ、キプロスなど)のタンカーが運んでおり、禁止措置が実施されれば、ロシアは「影の船団」を増やす必要が出てくる。

 制裁強化の背景には米国の最近の動きがある。