安住アナの発言から顧みるべきことは

 安住氏の発言から顧みるべきは、なすがままに都市と人々を酷暑にさらし続けるのか、それとも都市のあり方自体を大きく見直すかという点だ。

 本記事では「風の道」と「緑の日傘」(特に後者)について概観した。くり返しとなるが、街路樹がつくる日陰と、葉が水分を放出して空気を冷やす蒸散作用によって、歩く人が受ける熱(放射熱)を下げることができる。

 樹冠が大きい木ほど効果が高く、まったく木のない道に最初の数本を植えると増分効果が大きいことも分かっている。一方で、「なんでもいいからとりあえず植える」では不十分で、配置の設計と丁寧な維持管理が欠かせない。

 仙台の事例は、この当たり前を長年地道に続け、豊かな木陰と快適な歩行環境を都市の誇りとして育ててきた重要な実践の一つといえる。

 表にも書いたが、ヒートアイランドを緩和する対策は、「風の道」や「緑の日傘」以外にもある。共通するのは、それが都市のあり方の見直しと不可分である点だ。

 もし今、樹冠率などの数値目標を定め、継続的な資金と技術、そして運用を支えるガバナンスを整え、都市の緑を維持し、育てる政策への転換を始めるのならば、その取り組みは、「異常な暑さ」が「例年通り」となる未来の都市において、確かに私たち自身と次世代の命を守ることにつながっていくだろう。

東京の8月最高気温グラフ(2025年・2005年/気象庁データよりJBpress編集部作成)
東京の8月最高気温・日ごと一覧(2025年・2005年/気象庁データよりJBpress編集部作成)

【注釈】
[1]TBS安住紳一郎アナ「私が都知事だったら…」東京の酷暑対策「湾岸の高層マンション全部解体」. (2025年8月4日). 日刊スポーツ. (最終閲覧日2025年8月31日)
[2] 国土交通省 都市局都市計画課. (2013). ヒートアイランド現象緩和に向けた 都市づくりガイドライン.
[3] 大岡龍三, 佐藤大樹, 村上周三. (2008). 海風の内陸部進入に関するメソスケール数値解析と平均運動エネルギー収支分析に基づく海風阻害要因の定量化. 日本建築学会環境系論文集73(632), 1201-1207.
[4]安田聡子. 2025年8月8日. 安住アナ、東京の暑さに「私が都知事なら高層マンションを解体」。高層ビルと猛暑には関係がある?.  ハフポスト日本版.(最終閲覧日2025年8月31日)
[5] Tuholske, C., Caylor, K., Funk, C., Verdin, A., Sweeney, S., Grace, K., ... & Evans, T. (2021). Global urban population exposure to extreme heatProceedings of the National Academy of Sciences118(41), e2024792118.
[6] Hamada, S., & Ohta, T. (2010). Seasonal variations in the cooling effect of urban green areas on surrounding urban areas. Urban forestry & urban greening9(1), 15-24.
Hamada, S., Tanaka, T., & Ohta, T. (2013). Impacts of land use and topography on the cooling effect of green areas on surrounding urban areas. Urban Forestry & Urban Greening, 12(4), 426–434.
[7] Li, H., Zhao, Y., Wang, C., Ürge-Vorsatz, D., Carmeliet, J., & Bardhan, R. (2024). Cooling efficacy of trees across cities is determined by background climate, urban morphology, and tree trait. Communications Earth & Environment5(1), 754.
[8]NHK. (2024年12月2日). 木が突然落ちてくる!? 日常に潜む“倒木リスク”. クローズアップ現代.(最終閲覧日2025年8月31日)