「地球温暖化」と「ヒートアイランド」のダブルパンチ
ここで、「地球温暖化」と「ヒートアイランド」の違いを確認しておこう。
「地球温暖化」は、近年のCO2などの温室効果ガスの増加によって地球まるごとの平均気温が長期的に上がる現象を指す。一方、「ヒートアイランド」は、都市部が舗装面・建物の蓄熱や排熱、緑地の減少などにより(とくに夏の夜に)周辺より暑くなる現象を指す。
「風の道」の話は、主にヒートアイランドに関連する話だ(とはいえ、冷房需要が増せば、温暖化を間接的に悪化させ得るのでまったく無関係ではない…)。
安住氏の嘆きの根底には、この「地球温暖化」と「ヒートアイランド」のダブルパンチがある。近年の猛暑はもはや“異常”ではない。ここのところ例年のように、観測史上の記録が更新されている。
2023年の世界平均気温は、産業革命前比で年間平均約+1.48℃で観測史上最も暑い年となった。と、思ったら、2024年は+1.55℃となり、さらに史上最高を更新した。
国連のグテーレス事務総長は2023年7月の記者会見で「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」とまで表現し、危機感を強調している。
日本でも2023年は各地で「真夏日(日最高気温30℃以上)」や「猛暑日(同35℃以上)」の日数が過去最多を更新した地点が相次ぎ、東京都心では猛暑日22日・真夏日90日がともに過去最多となった。さらに、熱中症による救急搬送は増加し、2024年の5~9月の搬送人員は9万7578人で、2008年の調査開始以来最多である。
この暑さに拍車をかけるのが、都市固有のヒートアイランドだ。
夏の日中に都会のビル街を歩けば、日陰も風もない街路で容赦なく太陽光にさらされ、夜間も蓄熱により気温が下がらず、文字通り朝な夕なに人々の体力を奪う。1983年から2016年の30年間を比較しても、世界各国の都市で極端な高温・湿度にさらされる人の数は約3倍に増えている5。
日本だけでなく世界中で涼を確保するべく、風の通り道(「風の道」)の確保をはじめとし、大規模な緑地の造成や街路樹の拡大、保水・透水性、高反射性舗装の拡充など、複合的な都市設計の見直しが進められている。
「地球温暖化」と「ヒートアイランド」、両者は別の現象だが、猛暑のリスクを強め合う。あらためて表で整理しておこう。
「地球温暖化」と「ヒートアイランド」(筆者作成)