都市の樹々は植えてからが本番

 ところで、都市の樹々は、植えたら終わり、ではない。根の伸びるスペース、透水性舗装、雨水利用、適切な剪定を緑化計画に入れるべきことを、先述のリーらも述べている。

 実際、手入れが行き届かない街路樹は危険を伴う。2024年9月には東京都日野市でイチョウの大枝が落下し男性が死亡する事故が起きたが、街路樹の倒木は年間平均約5200本に達する。

 それではどうすれば良いのだろうか。NHK総合のクローズアップ現代「木が突然落ちてくる!? 日常に潜む“倒木リスク”」(放送:2024年12月2日)8では、宮城県仙台市の取り組みを紹介している。

 仙台市では、街路樹4万8000本すべてにIDを付与しデータベース化し、少なくとも5年に1度の点検と「樹木カルテ」で異常の早期把握を目指している他、民間と連携し剪定講習なども実施し、景観と安全の両立を図っている。

 環境倫理学者の吉永明弘も、『都市の緑は誰のものか』(2024年、図書出版ヘウレーカ)で仙台の事例について触れ、専門家の職業倫理に支えられた丁寧な手入れと、市民の理解・参加が両立している仕組みを分析している。

 吉永は、街路樹や公園・緑地は「社会的共通資本」であり、長期のビジョンと管理技術の継承、市民との協働で育てていくものだと述べる。予算や人員を街路樹に割くことについて市民の理解がなければ、都市の生きた遺産を次世代に受け継ぐことは難しいだろう。都市に涼をもたらしてくれる緑は、“勝手に生える”わけではない。