都市の緑化はどの程度の冷却効果があるか
さて、こうした猛暑への適応策の中で、近年改めて注目を集めているのが街路樹をはじめとする都市の緑化だ。真夏の厳しい日差しの下、緑地はまさに避難所となる。樹々が日射をさえぎるだけでなく、葉から水分を蒸散させる天然のクーラーとして周囲の空気を冷やす効果も持つためだ。
その効果を都市全体に拡げれば、街全体の気温を下げることも可能であることが多くの研究によって指摘されている。
例えば、名古屋大学の浜田修子・太田岳史の調査によれば、大規模緑地では夏の昼間には最大で2℃ほど気温が周囲より低くなる。その涼しさの届く範囲は緑地の周囲200〜300mにおよび、樹木が多いほど気温が下がる傾向がある。
つまり、住居・学校・通勤通学路など人々の生活動線から200〜300m圏内に、まとまった面積や樹冠のある緑地があると、私たちはこの涼しさの恩恵に浴することができる6。
とはいえ、樹木ならなんでも良いというわけでもない。2010-2023年に発表された182本の論文(110都市)を分析し、都市の樹木がもたらす冷却効果について整理したリー・ハイウェイらは、その街の気候と道の形に合わせて、樹種・本数・配置・管理方法を設計することが鍵であると指摘する。
例えば、日差しの強い歩道や開けた公園では、樹冠が広い木をベンチや導線の上に影がかかるようにまとまって植えると効果が大きく、ビル街の狭い道路ではむしろ風の通り道を確保するために間隔をあけることが必要とされる。
日本などの湿潤地域では、風通しの良さは日陰と同じくらい重要だ。また、大きい樹冠・葉量が多い木ほど日中の冷却効果は大きく、単一の樹種より落葉樹や常緑樹が混植されているほうが、効果が安定する傾向がある7。