米国債は世界一安全? 為替リスクも

日南:まずは世界一安全だと言われる「米国債」ですが、魅力はどこにあるのでしょうか。

頼藤:米国債の市場規模は債券の中で世界最大です。市場規模は日本国債の約20倍で、世界中の投資家や機関が売買している非常に大きなマーケットです。そのため流動性が高く、「欲しいときに買えて、必要なときに売れる」という意味でも魅力があります。

 加えて、日本国債と比べて金利が高いこともポイントです。米国債には、半年ごとに利息を受け取る「利付債」のほか、利息はもらわず、割引価格で購入して満期時に額面で償還される「ストリップス債」といったタイプもあります。いずれにせよ、足元ではドル金利が高止まりしていることもあり、現在は4〜4.5%程度の金利水準が続いています。

日南:米国債は持っているだけで、かなり利息が得られそうですね。

頼藤:安全性が高い上に金利も高いとなると、世界中から資金が集まります。米国という国の信用力が高いからこそ、みんな安心してお金を貸しているわけですね。

 さらに米国債は中途売却も可能です。本来、国債は「買って満期まで保有し、元本を返してもらう」のが基本ですが、米国債は途中で売ることもできます。価格が上がっていれば値上がり益も狙えますし、必要な時に現金化しやすいというメリットもあります。

日南:多くの魅力があるように見えますが、リスクはないのでしょうか。

頼藤:まず、米国債を買う場合は「ドル建て」で投資をするので、日本から投資する場合は、為替レートの変動によるリスクを負うことになります。例えば、円高のときにドル資産を買って、円安のときに売ることができれば理想ですが、為替を予想するのはプロでも容易ではありません。

 そのため、日本人が米国債を持つ場合、米国人にとっての「安全資産」とは少し意味合いが変わります。為替リスクを伴う分、私たちにとっては「リスク資産寄りの債券」と考えたほうが現実的です。
 
 もう一つのポイントは価格変動です。国債は額面100で発行され、満期時には原則100で償還されますが、途中で売買される価格は常に100とは限りません。国が新しく発行するタイミングではなく、誰かが保有していた債券を市場で購入する場合、100を超えた価格で購入すれば、満期時には額面100でしか戻ってこないため、元本ベースではマイナスになる可能性もあります。その場合は、途中でもらう金利収入も含めてトータルでプラスになるかどうかを見ないといけません。

 さらに、市場金利が上昇すると、新たに発行される債券の金利は高くなります。そのような状況の中で、過去に発行された「金利の低い債券」を持っていると、相対的に魅力が下がってしまいます。

 つまり、金利上昇局面で途中売却すると、購入時より価格が下がってしまい、損を出す可能性もあるわけです。一方で、満期まで保有すれば額面で償還されますから、途中で売らない限りは元本の変動はありません。この違いは、国債投資を考える上で大事なポイントです。