韓国映画は実際の歴史や政治、社会を鋭く描きます。朝鮮戦争(1950-1953)、軍事独裁政権の時代、朴正煕暗殺と全斗煥によるクーデター(1979年)、民主化運動、そして民主化(1987年)…と、韓国の現代史はまさにドラマに満ちています。現代史がそのまま映画の題材になるのです。最近公開されたものでも、『KCIA 南山の部長たち』(2020年)や『ソウルの春』(2023年)など、現代史を描いた映画には傑作が多い。これらの映画は日本でも評判になりました。

 韓国映画には、ときにはどぎついバイオレンス描写や性的描写の場面が登場します。例えば、カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受けた『オールド・ボーイ』(2003年)、同じパク・チャヌク監督の『お嬢さん』(2016年)、あるいはマフィアの抗争を描いた『新しき世界』(2013年)や『名もなき野良犬の輪舞曲』(2017年)などがそれに当たります。どれも、日本にも熱狂的なファンが多くいる映画で、私もこれらの映画は「面白い!」とは思いましたが、その後何度も見返すといったことはありませんでした。どぎつい描写には衝撃を受けつつ、映画を見て自分の人生の意味を深く考えたりすることはなかった。

 それよりも、若者世代の葛藤を描いた『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(2018年)や先ほども挙げた『建築学概論』、あるいは女子高生の仲良しグループの人生を描いた『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)といった映画を好んで見ました。男性の暴力性を描いた映画よりも、等身大の女性がフェアに描かれている映画の方が考えさせられることが多かった。これは好みの問題です。

在日コリアンと映画

 それと同時に、私は在日コリアンが登場する日本映画にも惹かれました。窪塚洋介と柴咲コウが共演した『GO』(2001年)は日本映画史に残る傑作だと思っています。

 窪塚洋介演じる在日コリアンの杉原は、中学までは民族学校に通いますが、「広い世界を見ろ」という父親の言葉に影響を受け、日本の私立高校に進学します。私自身も中学までは韓国系の民族学校に通いましたが、周囲の期待を裏切り、高校は日本の公立高校に進みました。まさに『GO』の影響を受けて、人生の進路を決めたのです。