日本における韓国映画の受容
私は今でこそK-POPが大好きになりましたが、当初から継続してずっと好きだったわけではありませんし、ドラマや映画は見ていても、熱狂的に「推し活」に励む人たちの熱量とは距離がありました。
それでも、韓国映画は見続けてきました。初めて見たのは小学校低学年の頃で、『猟奇的な彼女』(2001年)を見ました。型破りな「彼女」に振り回される主人公がとにかく笑えました。でも、今見返すと、女性の主体性を描いたフェミニズム映画として見ることができる。韓国社会が新たな男女平等の時代に入ったことを鮮烈に表現した映画でした。
ポン・ジュノ監督の映画はずっと好きでした。まずは『グエムル 漢江の怪物』(2006年)。ソウルの漢江に突如現れた怪獣に立ち向かう韓国人家族を描いた映画です。怪獣映画として面白かったのはもちろん、緊迫した場面にオフビートな笑いが混じる絶妙な語り口に引き込まれました。幼心にも、とにかく見ていてずっと面白い映画だった。アカデミー賞を獲得した『パラサイト 半地下の家族』(2019年)がポン・ジュノ監督の集大成であるのは確かですが、私は『グエムル 漢江の怪物』の方がお気に入りです。
大学生になり、韓国映画を意識的に多く見るようになりました。香取慎吾が司会の「SmaSTATION!!」というテレビ組で、映画好きの稲垣吾郎が『建築学概論』(2012年)という映画を紹介していて、レンタルして見てみると、これがもの凄く面白かった。大学生時代の初恋の相手だった女性が15年ぶりに会いに来るという恋愛映画です。ヒロインを演じるスジ(当時はアイドルグループmiss Aのメンバー)が、とびきり魅力的だった。主人公がヒロインに一目惚れするのも当然です。これだけ女優を魅力的に描いた映画はなかなかありません。
実際の歴史や政治、社会を映画の題材に
韓国映画はたびたび日本でも話題になりますが、特に韓国の民主化運動を描いた映画が話題になった時期がありました。
韓国は当時保守政権(朴槿恵大統領)で、左派・リベラル系文化人への圧力が強まる中で、それに負けじと映画製作に励んだ人々がいました。そうして誕生したのが『タクシー運転手』(2017年)や『1987、ある闘いの真実』(2017年)といった映画です。朴槿恵大統領がスキャンダルによって弾劾訴追され罷免された2017年に公開され、民主化運動を闘った世代だけではなく、韓国の若者たちによって熱烈に支持されました。