NVIDIAのジェンスン・フアンCEO(7月23日撮影、写真:ロイター/アフロ)
NVIDIA帝国に強力なライバル出現
2025年のAI産業は、アプリケーションやモデル勝負のフェーズを超え、計算インフラそのものを巡る歴史的な覇権争いに突入しました。
AI半導体は単なる部材ではなく、知能経済の石油と呼ぶにふさわしい存在になりつつあります。
そして今、その石油を支配しようとして真正面からぶつかり合っているのが、NVIDIAを中心に据えるGPU陣営と、グーグルが主導するTPU陣営です。
参照:「AI時代を切り開いた半導体、主役交代が静かに進み始めている CPU、GPU、TPU、NPUを経営の視点から読み解く」
米OpenAIやマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムといった巨大クラウド勢がGPUを基盤とし、グーグルとメタ(Meta)がTPUを土台に据えた新しい連合を形づくり始めました。
経営者にとって、この対立はAI活用を超え、企業の未来を左右するテクノロジー地政学の核心といって過言ではありません。
GPUとTPUの違いはよく語られますが、現場で起きている変化を肌で理解することこそ重要です。
GPUはあらゆるAIモデルに対応できる汎用性が強みになります。
NVIDIAの「H100」や「B100」は、世界中のスタートアップが当然のように使う前提で開発を進める、いわばAI時代の共通言語になりました。
さらに「CUDA」を中心としたエコシステムが強固で、深層学習のほぼ全領域で最適化が進んでいます。
CUDAは、NVIDIAが開発したGPU(Graphics Processing Unit=画像処理装置)の並列処理能力を活かすためのプラットフォームおよびプログラミングモデルです。
これにより、科学技術計算や機械学習、ビッグデータ解析などの汎用計算を高速化でき、CPUだけでは時間がかかる処理を劇的に短縮します。
つまりGPUは、AI開発を経済として成立させるための空気のような存在なのです。供給は常に不足し、価格は高止まりし、それでも需要は膨張し続けています。