東京・池袋の賑やかな通りに佇む中華料理店。このエリアは、本格的な中華料理を求める地元民や観光客に人気のスポットとなっている(写真:藤村憲司/アフロ)
*本文と直接の関係はありません

中国に住む両親と話が嚙み合わない「日中関係悪化」の受け止め方

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 永田町と中南海の「存立危機事態」を巡るバトルなど、どこ吹く風の、東京・池袋のガチ中華街。師走に入っても、相変わらず在日中国人たちで溢れ返っている。

 そんな中、中国人の知人3人と会食しながら、今回の騒動について、思いのたけを語ってもらった。それぞれ、日本に着いたばかりの50代男性旅行客、中国の日系企業で働く30代男性、日本に留学中の20代女性である。

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旅行客:日本へはもう何度も行っているが、こんなに苦労したのは初めてだ。まるでコロナ禍の時分に舞い戻ったかのようだった。

 まず、予約していた飛行機が突然、「やむを得ぬ理由により飛行をキャンセルします」と通知が来た。大都市から日本へ向かう航空便は、中国の航空会社も日本の航空会社も、「ほとんどがキャンセル」なのだとか。仕方ないから、日本行きの航空便が出ている地方都市を探して、そこから成田空港へ向かうことにした。

 だが空港へ着くと、「日本行きのお客様だけは自動チェックインできません」と言われ、ズラリと並ばされて、税関職員がパスポートをチェックする昔ながらの税関手続きを取らされた。

 私の前の若いカップルは、「日本行きの目的は?」「二人の関係は?」と聞かれていた。「われわれは同じ会社の同僚で、休暇を取って旅行です」と答えたら、「会社の休暇証明書を提出しろ」「会社の収入証明を見せろ」「結婚証明書を見せろ」……。

 税関職員に次々と難癖をつけられたあげく、「悪い国へなど行かずに帰れ!」と追い払われた。後で知ったけど、そのように税関職員が、無理やり日本行きの客を押し返すことは、「暴力勧退」(バオリーチュエントゥイ)と呼ばれているのだとか。

 ちなみに私の番になって、やはり渡航目的を聞かれたので、とっさに以前、妻と娘と日本旅行をした時の写真を見せて言った。「娘がいま、あろうことか悪の日本に留学中なもので、連れ戻すために行くんです」。すると、税関職員が満足げにうなずいた。「お前は愛国心があってよろしい、通りなさい」(笑)

留学生:私も似たようなことが、両親との間でありました。両親がビデオ通話で、泣きそうな顔をして言うんです。「アンタはこのまま日本にいたら、いつ日本人に殺されるか知れない。こっちでは皆心配している。留学なんか止めて、いますぐ帰国しなさい!」

 私は、「中国より日本の方が、よほど安全よ」「中国からの留学生である私は、日本人の同級生たちから同情されているのよ」と説明しました。しかし両親は、「日本にいると殺される」「そういうニュースを毎日見ている」……とまくしたてる。まったく話が噛み合いませんでした。