トランプ大統領から高市首相に電話、その中身は?
新華社は24日の米中首脳電話会談の中身を米国に先んじて次のように報じている。
習近平は、台湾問題における中国の原則的立場を明らかにし、「台湾の中国復帰が戦後国際秩序の重要な構成要素である。米中はかつてファシズムと軍国主義に共に立ち向かった。今こそ第二次世界大戦の勝利の成果を共に守り抜くべきである」と強調した。
これに対し、トランプは「習近平主席は偉大な指導者だ。釜山での会談は非常に愉快だった。両国関係に関する主席の見解に全面的に賛同する」「両国は釜山会談で達成した重要な合意を全面的に履行する。中国は当時、第二次世界大戦の勝利に重要な役割を果たした。米国は台湾問題が中国にとって重要であることを理解している」と述べた、という。ほかに、釜山会談での成果を確認しあい、ウクライナ危機についても議論したらしい。
その後、トランプ側がSNS「トゥルース・ソーシャル」上でこの会談について述べた部分には台湾や日中外交の衝突問題ついては触れられておらず、ウクライナやフェンタニル、中国が購入する米国産大豆について討議し、「我々と中国の関係は極めて強固である」とし、来年4月に習近平から訪中の招待を受け、また習近平を米国に招待した、としている。
興味深いのは、26日にウォールストリート・ジャーナルが報じた特ダネだ。
米中首脳電話会談で、習近平は台湾有事に関する高市発言について、トランプに対して怒りを訴えた、というのだ。そして、その数時間後、トランプは高市に電話をかけて、台湾の主権問題について中国を刺激しないよう助言した、という。
電話会談について説明を受けたという日本政府関係者と米国人1人が明らかにした。関係者によると、トランプ大統領からの助言は控えめで、高市氏に発言を撤回するよう圧力をかけることはなかったという。このネタ元の日本政府関係者は、トランプの発言に懸念を示した、という。
これを受けて、リベラルメディアや親中派は勝ち誇ったように、高市がトランプに叱られた、と報じている。一部保守派論客も、日本が米国に「はしごを外される」ことを懸念している。
果たして、本当にそうだろうか。少なくとも木原稔官房長官は、WSJが報じた「トランプの助言」という事実はなかった、と明確に否定し、WSJに報道の真意を問いただしているという。
元取材記者の立場からいえば、WSJ記者とあろうものが、完全なフェイクニュースを書くとは思えない。情報提供した日本政府関係者というのは実在していたに違いない。そして、その日本政府関係者が懸念を感じて、個人的な見方を交えて語った内容を記事にしたのだろう。
そのニュアンスについては、正直、ネタ元の日本政府関係者が正しく理解していたか、どのレベルで会談内容の説明を受けたかは不明だ。
さらに日本メディアが裏を取らずにWSJ記事を引用した。つまり、日本の政治部記者たちは高市周辺からは情報が取れなかった。高市チームはメディアに軽々しく機密を漏洩しない優秀な人材がそろっている、ということだ。
WSJのネタ元は、高市から比較的遠い周辺人物であり高市サイドに立って機密を守る立場の関係者ではない、と想像できるだろう。
ならば、どういうニュアンスでトランプと高市がこの問題をやり取りしたのか、正確にはわかっていない可能性もある。(機密を守る立場の関係者から)曖昧な説明を受けた周辺政府関係者が、不安を感じたまま、米国記者に語ったのかもしれない。