「ほのかな希望の光が見え始めた」。就任からまもなく100日を迎えるオバマ米大統領の景気後退「減速」宣言をきっかけに、米経済の先行きに楽観論が急速に台頭している。だが、一般国民に曙光の実感はなく、失業はまだまだ深刻化する可能性が高い。
「ウォール街のキャリアウーマンからストリッパーに転身」。アナリストとして働いていた証券大手モルガン・スタンレーを解雇されたランディ・ニュートンさん(28)は、ウォール街の苦境を象徴する人物として、テレビやタブロイド紙に引っ張りだこだ。
ニューヨーク・マンハッタンの高級ストリップバー「リックズ・キャバレー」で働く彼女は週に3~4日、ステージに立ちチップ抜きで1晩1500ドル(約15万円)を稼ぐ。解雇された憂さ晴らしに店を訪れ、店長からスカウトされたのがきっかけ。他にも、金融や不動産などの業界で働いていたキャリアウーマンが、ストリッパーに応募してくる話が後を絶たないという。
ワシントン市内の一般飲食店では、完璧なアメリカ英語を話す白人のウエイターやウエイトレスが目立ってきた。昨秋の金融危機以降、米大手企業は相次いで人員整理を強化しており、失業したホワイトカラーの白人層が、低賃金で待遇の悪いサービス業になだれ込んできているのだ。
オバマ大統領は就任以来、7872億ドル(約79兆円)という史上最大の景気対策や、最大1兆ドルの官民合同基金による金融安定化などを矢継ぎ早に打ち出してきた。個人消費や住宅関連の指標の改善を根拠に、一連の政策が「米経済に進展の兆しを生み出し始めた」と強調。バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長も「急激な落ち込みが鈍化する兆候」があると述べ、大統領の発言にお墨付きを与えた。
失業増で再選逃した父ブッシュ
だが、景気の遅行指標である雇用面では「2009年も厳しい年」(オバマ大統領)になる。3月の失業率は全米で8.5%と、リセッション(景気後退)に入った2007年12月から3.6ポイントも上昇。自動車ビッグ3のお膝元ミシガン州は12.6%と全米最悪となり、経済規模で最大のカリフォルニア州は1941年以来という11.2%に達した。
1月20日の就任以来、オバマ政権は「迅速な行動」がカギを握るとして、毎日のように経済・金融対策を発表し続けてきた。積極果敢な行動は概ね国民に評価されているものの、生煮えで打ち出されたものも少なくない。例えば官民合同基金。2月上旬に発表されたが、具体性に乏しいとして市場の失望売りを誘った。3月にようやくスキームの概要が発表されたが、有効性に懐疑的な見方は根強い。