技術より格段に難しい倫理設計

 ChatGPTは会話文の生成精度が格段に向上し、ユーザーの感情や文脈を推測して自然に応じることができるようになりました。

 例えば、恋愛小説の創作補助や、心理療法の対話シミュレーションなどでは、ある程度の親密なトーンが求められます。

 しかし従来のモデルでは、それが「性的」「不適切」と判断され、創作が止まってしまうケースも少なくありませんでした。

 こうした現場の声を受け、OpenAIは成人向けに限ってより広い表現範囲を認める方向に舵を切ったのです。

 もちろん、これには倫理的リスクが伴います。成人であっても、AIとの親密な会話にのめり込み、現実との境界が曖昧になる懸念があるのです。

 海外では、恋人型AIアプリ「Replika(レプリカ)」が人気を集めた一方で、ユーザーの一部がAIに過度に依存する事例も報告されています。

 また、AIが性的・感情的な会話を生成することが、人間の尊厳やプライバシーにどう影響するのかという議論も避けられません。

 そのため、OpenAIはこのモードを「年齢確認済みユーザーのみ利用可能」とし、地域ごとの法制度や文化的基準に従って段階的に展開する方針としています。

 倫理の壁をどう設計するかは、技術以上に難しい問題です。

 AIが生成する文章や音声は、法的には表現とみなされる一方で、人間との相互作用という点では心理的影響が非常に強いといえるでしょう。