Iさんは今、スーパーで品出しをしている(写真はイメージです)(写真:Zoey/イメージマート)
目次

 最近、おじさんが意外な場所で働く姿を見かける。給料が上がらない、本当に年金もらえるの?AIに仕事を奪われる…!将来の不安から副業をはじめる中高年男性が増えているのだ。おじさんたちはどんな副業をしているのか、どれくらい稼いでいるのか、あるいはまったく稼げていないのか。組織をはみ出し、副業をはじめる全力おじさんの姿をより深くリポートする。(若月澪子:フリーライター)

早期退職後、スーパーの品出し担当に

 大企業が「40代以上の社員を対象に早期退職を募集した」というニュースをしばしば耳にする。「早期退職」は「リストラ(人員整理)」のソフトな表現だと筆者は認識している。早期退職募集の主な目的は、人件費の削減と組織の新陳代謝である。早期退職者には見返りとして、退職金の上乗せや再就職先のあっせんなどが行われる。

「社内のパワハラ体質に嫌気がさし、早期退職を受け入れました。ちょうど母親の介護というタイミングもあったのですが、それは言い訳ですね。会社の居心地が悪くなったのが本当の理由です」

 こう話すのは、外資系の製薬会社でMR(医療情報担当者)を35年以上勤めてきた西日本在住のIさん(61)。スラリと背の高いIさんは、ジーパンにダンガリーシャツを着た、身のこなしのスッキリとしたイケオジである。Iさんは会社を57歳で早期退職し、現在は近所のスーパーで品出しのアルバイトをしている。

「製薬会社のMRとスーパーの品出し、全く異なる仕事ですよね。でも、今はそれなりに充実した日々を送っています」

 スーパーで働き始めて1年。仕事内容だけでなく、スーツ姿のMR時代とは服装も違う。

「鮮魚売り場の掃除や品出しをしています。鮮魚コーナーのバックヤードで使用する台車やプレートを洗ったり、消毒液をかけたり。魚をさばいた後の血のりをデッキブラシで洗ったり。マイナス20度の冷凍庫からマグロや貝類などの商品を取り出し、トレーに載せ、ラップして鮮魚コーナーに並べるのも私の役目です」

 スーパーの品出しは、売り場に隙間を作らないように商品を埋めていく。夕方17~18時ごろは次々と商品がハケていくので、商品を冷凍庫から出して並べるの繰り返しで、息つく暇もない。

「夕方に商品を運ぶときは、スーパーの中が混雑しているので、お客さんにぶつからないようにと気を遣います。忙しい時に限って商品の場所を尋ねるお客さんも多く、まだ自分も売り場のことを把握しきれてないので、迷うことばかりです」

 勤務時間は12~21時。休みは火曜と木曜、時給は1000円だ。

「以前は車で病院を回り、医師に薬の説明をする仕事でしたが、今は体を使う仕事だから大変です。もうちょっと給料がよければいいんですけどね。でも製薬会社にいた時より、プレッシャーからは解放されています」